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(No.306)2010年4月15日

『オリンピック招致について(その12)』

長野五輪金メダリスト『清水宏保の目』という、コラム記事があります。見出しは『悲しいお金の使い方』というものですが、内容を少し紹介させていただきます。

僕はこれまで本当に多くの方々にお世話になった。地元の方々、応援してくださった皆様、用具の面倒を見てくださる方々、日本オリンピック委員会(JOC)の皆さん。すべての人の支えがあって、4大会連続五輪出場、金、銀、銅メダルの獲得があった。

不遜かもしれないが、申し送りをしておきたいことがある。すこし、厳しい言い方になる。が、聞いていただければ幸いだ。

日本はまだまだスポーツ後進国というしかない。五輪の期間中、国中が注目しメダルの数を要求される。選手が責任を感じるのは当然だが、ノルマを課せられているような感じにもなる。それまでの4年間のフォローを国やJOCはきちんとしてきたのだろうか。

政府の事業仕分けが行われ、スポーツ予算は削られる方向になった。全体的な削減は仕方ないとしても、仕分けの仕方は適切だろうか。

と述べた上で、スポーツに取り組む姿勢を韓国と比較した記述があり、そして、本音の部分として

バンクーバー五輪では、JOCの役員、メンバーが大挙して現地入りしている。予算は限られている。そのため、選手を手塩にかけて育てたコーチや、トレーナーがはじき出され、選手に快適な環境を提供できていない。お金の使い方が逆だろう。

といったことが述べられています。

また、その次に、スポーツが健康と医療や文化に貢献している記述が続き、締め括りとして

五輪の時だけ盛り上がって、終わったら全く関心がないというのではあまりに悲しい。日本にスポーツ文化を確立させるため、国もJOCも努力を惜しまないでほしい。

と結ばれています。

この記事を読んで感じたことは、今の政府は、スポーツには関心がないということであり、JOC役員も選手より自分たちの処遇だけにしか関心がないということを述べているのではないかということでした。

そうしたJOCの利己的な体質が今回のオリンピックの招致検討にも現れているのではないかと思うのです。

つまり、JOCとしては、政情不安定な東京都で、民主党の主導下での都議会の状況からすると、都議会で東京オリンピック招致活動を否決されたらとの懸念があるので、広島市に何としてでも招致活動に手を挙げていて貰わないと困るといった考えを持っているのではないかと思われるのです。

そのことを感じさせる記事があります。それは4月3日の中国新聞の記事で、その中で、市長とJOC市原専務理事の「懇談では市原氏が、市議会に削除された予算が復活したことに関して『ほっとしています』と伝えた」とあります。

 

この言葉を私なりに解釈すれば、東京都が招致活動を断念しても広島市が手を挙げているのでJOCとしては「何とか面子がたつ」との思いだけではないでしょうか。あるいは、広島市も東京都と同じように平穏無事な情勢ではないことを承知の上で、降りられたら困るとの思いからの「ほっとした」発言ではないかと思うのです。

また、記事の最後には、「市原氏は、メーンスタジアム周辺の渋滞対策や市民の支援と協力が不可欠であることなどを助言した」とありますが、当たり前のことで、市民みんなが思い、感じていることであり、助言でもなんでもない、常識を言っただけだと思われます。市政を市民に発信する重大な使命を持つ地域のオピニオンリーダーとしては、もっとしっかりしてほしいものです。

 

また、4月6日の中国新聞には、JOC市原専務理事へのインタビュー記事が掲載されていました。ここにも、東京都と広島市の両方を天秤にかけておかなければならないJOCの内部の苦しい事情を伺わせる記述があります。

第1回広島市議会定例会の状況を認識しながら、

政治問題になるのは残念だ。16年の五輪招致で東京が弱かったのは都民の盛り上がりが低かったから。都民の支持率は55%だった。広島でも市民の盛り上がりが重要であり、もっと情報を開示して市民に訴えたらどうか。

と述べていますが、これは、広島でも東京と同じように市民不在のオリンピック施策が一人歩きをしているとの認識ではないかと思われるのです。

また、

市長の動きはJOCにはありがたい。招致活動で五輪のことが活字になったり、話題になったりすること自体が一つの五輪ムーブメントだからだ。

ということを言っていますが、このことは、広島市の秋葉市長は、ただ単にJOCの優秀なPR職員との認識なのではないでしょうか。

さらに、オリンピック開催の財政問題では

(候補都市が)一本に絞れられれば、JOCとしても国家で保証してくれと当然頼む。

とありますが、JOCでも財政的にもひ弱な広島市でオリンピック開催ができるはずがないとの認識の下、広島市で引っ張られるだけ引っ張って、危険負担がなくなった時点で降ろせばいいとの感覚ではないでしょうか。これでは、全ての面での被害者は広島市民だということになるのではないかと思います。

また、

順序として東京はまだ手も挙げていない。アクションが出ている広島から最善のサポートをする義務がある。(中略)石原慎太郎知事は難しい政局の中にいる。(どちらも民主党主導の)都議会と国会の動きは非常につながった部分がある。

という、この記事からすると、もし、東京都が五輪に手が挙げられなくなったときのため、スペアとして広島市をもっていないと日本国内には立候補都市がなくなり、JOCが世界に恥をかく危険があるとの認識ではないでしょうか。

そして、締め括りに、

広島市は正々堂々と強いポリシーで臨んでもらいたい。

とありますが、どのような理由があるにしても、広島市は被害者になりそうです。

さらに、4月8日の中国新聞には「五輪招致署名19万人超す」との記事がありました。その記事では、2月から始めた署名活動が3月末までに約19万人に達したとありますが、広島市の人口は117万人です。

約一ヶ月でその様な数の署名が集まるとすれば、広島中は五輪一色に染まっていなければならない状態のはずです。しかし、多くの広島市民は五輪開催を、非常に冷静な目で成り行きを見つめています。19万人という署名数は今の状況では到底信じられないものです。

その上に「広島だけでなく、日本中や世界各国からも集め、6月末までに100万署名を実現させたい」とも述べられていますが、現在の広島市の状態は五輪を招致できるか、できないかの検討をしている時です。多くの広島市民は結論が出るまでは「静かに状況を見守っている」状況です。

改めて言わせていただきますが、現在、広島市に居住していらっしゃる市民にあらゆる面で被害が及ばないのであれば、また、私たちの子孫に大きな負担を残さない確証があるのであれば、誰しもオリンピック開催は諸手を挙げて賛成のはずです。

しかし、アジア競技大会開催後の、広島市が抱えた負債の大きさからしても、オリンピック招致に手を挙げた他都市の事例からしても、その上に、日本がいま抱えている政治・経済情勢からしても、諸手を挙げて賛成し難いのが現実ではないでしょうか。

広島市議会議員は心から広島市と市民を愛しています。第1回広島市議会定例会でも、そうした観点から、山積する課題について、様々に議論してきましたが、これからもそうした多くの議論をしながら、市長の市政運営を監視していきたいと思います。

『清水宏保の目』の中に、政治も行政も覚えておかなければならない記述があります。

競技スポーツだけではない。「一人1ドルスポーツの予算をつければ、医療費が3.21ドル安くなる」という統計を見たことがある。ヨーロッパではスポーツ省のある国が多い。スポーツを文化としてとらえる発想が根付いているからだ。生涯スポーツが、また競技スポーツの裾野となる。

というものですが、オリンピックの招致よりも、こうした地道な活動を大切にし、市民生活に反映させなければならないのではないかと思うのです。

最後に一言付け加えます。

それは、ひょっと感じたことですが、秋葉市長がオリンピック広島招致を言い出された時期は、バンクーバーオリンピックの話題で世論が盛り上がろうとした時であり、世界最大のイベントはオリンピックしかないとの思いと、広島中の目と耳がこの話題に向いてくれると単純に思われたのではないかということです。

これからは、5月1日から10月31日まで中国・上海市で開催される『上海万博』の話題が世論の中心になる時期です。もし今、市長がイベントの発想をされるとしたら『広島平和万博』開催の提唱になるのではないかと思います。

オリンピックの開催期間は1ヶ月です。万国博の開催期間は6ヶ月です。イベントへの集客人員は万国博の方が数段上のはずです。また、万国博の先例は、大阪であり、沖縄、筑波、大阪花と緑、名古屋であり、都市づくりと都市の活力の源を作り上げてきた歴史があります。

地道に積み上げて都市像を形成するのであれば、広島市にとっては「平和とグリーンエコ社会」形成のための万国博覧会開催の方が似合うのではないでしょうか。皆さんはどのようにお感じですか。