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(No.293)2010年1月21日

『オリンピック招致について(その10)』

本年1月1日の『電通報』に、今年行われる国際会議と主要なスポーツイベントが紹介されており、その中に「2010年は国連が定めた『国際生物多様性年』で、10月11日〜29日に『生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)』が名古屋市で開かれる」との記事がありました。

地球環境問題を巡る様々な議論がなされることになっているようですが、この『COP(コップ)』とは、皆さんは、「気候変動枠組み」を思い浮かべられると思います。しかし、そもそもは締約国会議(Conference of the Parties)の略で、環境問題に限らず、多くの国際条約の中でその加盟国が物事を決定するための最高決定機関という意味なのです。

その中で、最も頻繁に耳にするCOPが気候変動枠組条約(Framework Convention on Climate Change, FCCC)のCOP-FCCCであり、その他にも、今年名古屋市で開催予定の生物多様性条約がCOP-CBD、砂漠化対処条約はCOP-CCDと、それぞれ締約国会議があります。

COPに続く数字はその回数を表しており、例えば、気候変動枠組条約関係では、1995年のCOP1に始まり、1997年に京都で開催されたCOP3で京都議定書が採択されています。翌1998年、ブエノスアイレスで開催されたCOP4では、京都議定書で承認された様々な制度を実施するために必要な詳細ルールを2年間かけて交渉することが合意されています。このように、締結国会議が重ねられ、昨年12月にはコペンハーゲンでCOP15が開催されています。

大型スポーツイベント関連では、「第21回オリンピック冬季競技大会」が2月12日〜28日にカナダのバンクーバーで、また「2010FIFAワールドカップ」が6月11日〜7月11日に南アフリカの9都市10会場で開催されます。

このサッカー・ワールドカップ大会には、日本を含む32チームが競うことになっていますが、前回の06年ドイツ大会では延べ335万人が観戦されています。この大観衆が集まるサッカー・ワールドカップ大会について、日本は2018年と2022年の開催の招致を目指していますが、その開催都市に立候補しなかった広島市が何故オリンピック開催なのか理解しにくいものがあります。

1月7日の読売新聞には、「大阪市が開催都市に立候補。開催スタジアムは長居陸上競技場、若しくは梅田北ヤードで検討が進む8万人規模の新スタジアム」「愛知県豊田市も開催都市として正式に立候補」とあります。

広島市は開催都市には立候補せず、1月7日の中国新聞によると、18年と22年のキャンプ地に立候補するのだそうです。20年のオリンピック招致を目指すために、ワールドカップ開催都市の立候補を見送ったはずなのに、何故このようなバラバラな意思決定がなされるのでしょうか。最高意思決定者のスポーツやイベントに対する知識の欠如なのでしょうか。広島市の前途に暗雲が漂ってきていると思えてならないのです。

その他のスポーツイベントでは、「第16回アジア競技大会」が11月12日〜27日に中国・広州で開催され、日本では、「東京マラソン2010」が2月28日に開催されます。

この東京マラソンに関連して、少し古い新聞ですが、05年9月26日の産経新聞に「石原流」の見出しで次のような記事が掲載されていました。


金では買えない「五輪効果」を重視する石原都知事の政治姿勢も強く反映している。

『実利』とは別に、スポーツイベントを通じて地域や国の活力を出そうという手法は『石原流』だ。平成18年度中に開催を目指す「東京大都市マラソン」。トップランナーから一般市民、障害者まで男女3万人が参加する大会で、東京で開催されている三つの国際大会マラソンを統合してアジア最大規模の大会を目指す。コースに皇居や銀座など東京の名所を加えて内外の観光客を呼び込み「世界の東京」をアピールする狙いがある。

先例にはロンドン、ニューヨークでもあり、「五輪招致の際には強い『売り』にもなる」と都幹部。25年の東京国体(内定)とあわせ、「ホップ(マラソン)、ステップ(国体)、ジャンプ(五輪)」と発展させ、大きなスポーツムーブメントを東京から国に巻き起こし、閉塞感を打破したい」という石原知事周辺の理想が、五輪招致の背景にある。

私たちも、広島市の活性化のために、閉塞感のある現状を打破できる事業に何があるかを真剣に考える時だと思いますが、広島市の秋葉流五輪招致の「自分流の、独りよがりの」思いだけで、広島市民や日本国民、世界中の人々の共感が得られるのでしょうか。

あくまで秋葉流を押し通したいのであれば、広島市長ではなく、国会議員か政府の平和に関する特別な代表ポストか、国連の代表にでも任命されるよう努力される方が、「あなたの理想のポスト」になるのではないでしょうか。地方都市での平和活動を否定するものではないのですが、現在の広島市の置かれているあらゆる面における環境、状況は決してよいものではありません。

また、市長職の重責を考えますと、広島市民の生活の「安心と安全」を確保するだけでも、大変な重圧があるのではないかと思います。オリンピックや核廃絶、世界恒久平和の希求も必要ですが、今は広島市民が安心して安全で、平和に豊かに暮らせることの方が、世界に誇れる都市「ひろしま」の実現に繋がると考えますし、この都市像の延長が被爆都市ヒロシマの市民が心から望んでいるものではないでしょうか。

財政的にも逼迫している状況の中、核廃絶運動も市民の目線と懐具合に合わせて、海外出張はやめて、広島市にいて、地に足が着いた地道な活動と被爆者の心が通っている平和の発信をしてほしいものです。

核廃絶はオバマ大統領に任せて、オリンピックは東京都に任せて、被爆都市広島は平和の原点に返った取り組みを行うべきです。五輪開催となると、コストの問題があまりにも大きいのです。

先ほど紹介しました05年9月26日の産経新聞には、次のような記事も掲載されていました。


「五輪招致となると、再開発に合わせた大規模施設の整備に数兆円規模がかかる」(幹部)との声も。

04年のアテネ五輪の総経費は約90億ユーロ(約1兆2,150億円)で、00年シドニー五輪の38億2,000万ユーロを大きく超えて史上最高を記録。しかも、これは交通網整備を除いた額で、総額のコストは約110億ユーロに上るとされる。

国内でも98年長野冬季五輪では大型公共事業の連発で県の財政は逼迫。巨大スポーツ施設の五輪後の維持管理が問題になった。招致で北京に敗れた大阪市は活動費に約40億円がかかり、主会場予定地だった大阪湾の人工島の開発計画は宙に浮いたままの惨状だ。

08年の北京オリンピックの開催経費は計り知れないものであったろうと思われます。ロンドンでの第30回オリンピック競技大会(2012年)はオリンピック史上初の3度目の開催になりますが、メインスタジアムは最大8万席を擁するもので、ロンドン東部の市街地再開発地域に建設中です。しかも、便利で優れた交通網を構築して、その最新施設を大会後も長年にわたり利用することを目指した開発計画が進められているようです。

オリンピック開催は施設整備やインフラ整備を始め、予想を越える出費を覚悟しなければならない世界一大きなイベントです。世界平和の構築にも大きな労力と経費がかかるはずですが、その負担に耐えられる体力と企画力、人材その他もろもろの要件をクリアできる目処を立てた後に、立候補するのが世の中のルールだと思います。

「市長は、世界恒久平和の希求と核廃絶とオリンピック開催を一度に成し遂げようとされる発想はあっぱれですが、どれ一つとっても本当に難しいことなのに、一度にすべてを成し遂げようとするのは、地球上唯一のスーパーマンなのでしょうか」と言われた人があります。

この世の中には、スーパーマンは存在しないのです。ましてや、地方自治体の長の仕事は、まず、市民が豊かに暮らせる街づくりと、市民の安心・安全の確保であると思います。今は、地方自治体でやるべき仕事の範囲を自覚し、それに基づく施策を着実に実施することが必要ではないでしょうか。

また、東京都のホームページに、平成21年10月30日の石原知事の定例記者会見録が掲載されていますが、その中で、大変気になる次のような発言がありました。


【知事】なかなかしかし、財政規模からいっても、別に、東京が大きくて向こうが小さいってことじゃないですよ、ただやっぱり大変だと思います、そりゃ。それから、競技場も、トラックが10レーンですか、なきゃいかん。(※陸上競技会場には、9レーンのトラックと、サブトラック、投てき練習場が求められている。)それから、仮設も含めて、10万人が、開会、閉会のときに収容せなくちゃいかんという、そういう、IOCが何を根拠に言っているか知らんけど、今のオリンピックの大会の規模からすると、ごく妥当な、そういう必要条件というのを、広島も精通してなかったみたいで、ちょっとその話はびっくりしてましたけれど。

このことは、秋葉市長はオリンピック開催には、何が必須条件であるか、どこまでが必要条件であるのか等々、パラリンピックを含め何の知識も持ち合わせていなかった証拠ではないでしょうか。

ただ単にマスコミ受けし、マスメディアが大騒ぎしてくれればいいと、来年の市長選に向けた自己PRの手段にしか過ぎないのではないかとしか思われないのです。

名古屋で開催される生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)が成功裏に終わることを切に願うものですが、広島市においても、こうした国連が主催するような国際会議が継続的に開催できる都市づくりをすることが必要なのではないでしょうか。

地方都市が開催できる確率が低いであろうオリンピックの招致活動に没頭するより、地球環境保護を始め多くの国際会議を広島市で開催できるよう誘致活動をすることの方が「世界恒久平和の希求と核兵器廃絶」を世界に訴え続ける広島市には一番似つかわしいイベントだと思われます。

また、5月1日〜10月31日には、「2010年上海国際博覧会」が開催されます。「より良い都市、より良い生活」がテーマです。イノベーションと調和によってもたらされる未来の都市生活の提案で、入場者数は7,000万人が目標だそうです。

広島でも、2013年には「全国菓子博覧会」が開催される予定ですが、成功させることによって、こうしたイベントを広島で開催していくノウハウの蓄積と人材の育成、確保になると思います。

「長」の大きな仕事は、自分だけが目立ち、花も実もないあだ花を咲かせることではなく、良い人材を育てることにもあると思います。そうしたことが安定して継続する行政には必要なのです。

大きな国際大会は既に2015年までは予定されており、確実に準備活動をされています。そうした中で、広島に似つかわしいイベントを見つけ、広島から世界に自信を持って発信できるよう、市民、経済界、学会、行政や議会等々が力を合わせ頑張る時期にあると思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか。