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(No.284)2009年12月1日

『湯広島県知事の本』

11月30日(月)に新しい湯広島県知事が初登庁されました。湯知事は、今年の10月19日に日経BP出版センターから『巨大通信ベンチャーの軌跡』という本を出版されています。



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本の表紙

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本の裏表紙

知事の思いと、考え方が素直に綴られており、読みやすく分かりやすい書物ですので、一度、目を通されればこれからの県政の方向と県行政の運営手法が解りやすくなると思います。その内容の一部を紹介します。

天才型ではなく「官僚組織」が強い理由

   社員を増やして○○部などの箱をつくれば組織はできますが、ただ単に人が増えただけの組織では機能しません。組織を機能させるためには、その組織の責任と権限を明確にし、意思疎通を図って組織ごとにやるべきことを共有する必要があります。同時に、組織間で協力し合って会社の最終目標に向けて努力するような仕組みをつくらなければなりません。

   この仕組みとして私が必要だと思うのは、実は「官僚組織」です。「官僚組織」というと、皆さんどのようなイメージを待たれるでしょうか。堅い、融通が利かない、形式的、地味といったイメージだと思います。一方、ベンチャーのイメージはどうでしょうか? 柔軟性がある、元気、派手、ワンマン経営といったイメージかもしれません。こう並べてみると、官僚組織とベンチャーは真逆にある存在のようにも思えます。

   しかし、「官僚組織」とは本来、組織を専門的機能に分化して、権限と責任を明確にした上で専門家にその運営を任せるというのが本旨です。近代の規模の大きい会社組織では、この官僚組織を取り入れ、効率的運営を図るようになりました。百人を超える組織を近代的・効率的に運営するとなると、このような専門分化は不可欠です。ベンチャーといえども、組織を成長させてある大きな目標を達成しようとすると、このような専門分化、つまり「官僚組織」を目指さざるを得ません。

   もっとも、極めて能力の高い天才的なベンチャー経営者は、何人かの部下のサポートは得ながらも、一人で企業を運営し、困難を乗り切ることができるかもしれません。私の知っている例で言えば、ソフトバンクの孫正義社長などは、こういった数少ない天才の一人だと思います。アップルのスティーブ・ジョブズCEOもそういった天才の一人でしょう。

   エピソードとして聞いた話ですが、ジョブズ氏が日本で開催されるコンベンションヘの出席のために来日し、開催日を前に会場を見学したことがあったそうです。その際、飾り付けに使われていた多数のワイヤーが太すぎると指摘し、結局全て張り直したそうです。ワイヤーの太さはミリ単位の違いだったと聞いていますが、経営者がそれだけ全てについて詳細にこだわって会社を運営できるのは、素晴らしいことだと思います。

   問題は、孫氏やジョブズ氏といった本当の天才は圧倒的に数が少ないことです。「普通の天才」(ちょっと変な表現ですが)では、成長フェーズを一人で乗り切ることはできません。やらなくてはいけないことが急激に増えた時に、中途半端な才能では意識が回らずに、やり残しが積み重なり、致命的な問題へとつながってしまいます。ところが、中途半端に能力が高いと、自分がやったほうが人に任せるよりも仕事が速くかつクオリティが高い気がするものです。何でもかんでも、自分が直接手を出さないと気が済まなくなることが多いのです。

   一方、「賢い凡人」は、自らの限界を知り、他人の力を借りて組織力で行動することができます。はなから全てを自分の力だけでやることなど考えていないからです。これは、大企業のサラリーマンも同じでしょう。いわば凡人である官僚や大企業のサラリーマンは、組織力を発揮する訓練を受けているとも言えるのです。

大勢の人を一瞬のうちに動かす仕事の連続が行政です。一つの油断も許されない組織の長の責任を背負われる考え方がはっきり表現されていて、安心感が持てる所信表明だと思います。元気な広島県の復活と、新しい広島の強烈なリーダーとなるよう望むものです。




(※追伸(広島県の経営戦略会議について))

12月1日の中国新聞トップページに、湯知事は「経営戦略会議」を設置することを明らかにしたとありました。県政改革や重要課題について判断するとのことですが、間違っても安易な「事業仕分け」にならないことを願っています。

広島市も平成15年に「公共事業見直し委員会」が設置され、市長の独断専行で市政の基本方向が見直された経緯があります。その結果、広島市では都市インフラの整備が進まなくなり、5年経っても活性化の息吹も感じられず、オリンピックも掛け声倒れに終わると揶揄されてしまうのです。

「No.93 平成16年1月28日(「公共事業見直し委員会について」)」

「No.98 平成16年2月25日(「公共事業の見直しと議会について」)」

知事におかれましては、はじめから議会制民主主義を否定されることなく、まずは県政の状況をしっかり把握され、改革の方向、その手段を県民に十分説明された上で、著書に書かれている理念をもって行動されることを強く望みます。