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(No.252)2008年11月21日

『書籍の中から(Part2) 〜水道が危ない〜』

『WEDGE(ウェッジ)11月号』に「あなたの町の水道が危ない」との見出しで、「赤字に喘ぐ自治体、育たぬ水ビジネス」というサブタイトルが付された記事が掲載されていました。

記事の内容は、「私たちが普段何気なく使い、排出している水。それを支える上水道・下水道事業が危機に瀕している。一体、誰が、この私たちの“水”を守るのか?」と公共が担っている上下水道事業の今後の経営に関して、警鐘を鳴らすもので、現在の上下水道事業が抱える問題点が指摘されているとともに、自治体経営に当たっても、大いに参考になると思われましたので、紹介させていただくことにしました。

今回の記事は、次のような、上下水道事業について外資系の進出の兆しが見られることで書き始められています。

“ウォーターバロン(水男爵)”という名を聞いたことがあるだろうか?

飲料用の水供給事業(上水)や、下水処理事業をグローバルに展開する仏・ヴェオリアウォーター、仏・スエズ、英・テムズウォーターの3社がそう呼ばれている。…ヴェオリアの名前がクローズアップされたのは、06年のこと。広島市の西部水資源再生センター(下水処理場)の管理・運営についてヴェオリアを主体としたグループが、「包括委託」を受注したのがきっかけ。ヴェオリアにとっても日本国内で初めての大型案件の受注となった。…ヴェオリアの強みは、施設の建設から管理・運営までを一貫して請け負い、低コストで行うことにある。

そして、次に、そうした市場開放に至る背景の分析がなされていますが、その一つに自治体の財政難が挙げられています。

続けて紹介しますと、

日本の上下水道市場でも、今、市場開放の流れが強まっている。背景にあるのは、地方自治体の財政難。上下水道ともに受益者負担の原則(下水は家庭から排出される汚水部分に限る)のもと、利用料金で運営費用を賄うこととされているが、上水で89.3%、下水で74.3%(06年度)にとどまっている。

と述べられています。

水道使用料や下水道使用料といった利用料金で、その運営費用を賄うことができれば、問題はないのですが、ここにもありますように、それができていないのが実態であり、その差額は一般会計など他会計からの繰入金、言い換えますと、税金で対応しなければならないということになっているのです。

今回の記事では、その額が、下水で1兆9,609億円、上水で2,462億円にも上ることが明らかにされています。それが、各自治体の財政にとって、大きな負担となっているわけですが、広島市もその例外ではないのです。

しかし、いくら安心・安全な市民生活を維持していく上で不可欠なライフラインの確保のための支出と言っても、本来、受益者負担の原則のもとに運営されるべき事業であることや、現下の厳しい自治体の財政事情の中で、市民の要望に十分沿えるような財政運営ができていない状況にあることを考えますと、広島市においても、上下水道事業の運営に対して、これまでどおり、一般会計(税金)で負担し続けるという構図は、見直さなければならない時期に来ているのではないかと考えますし、今後の上下水道事業の経営状況などを踏まえた上で、その在り方、対処方法等に関しても、早急に検討をし、市民に対して、きちんと説明していくことが必要になっているのではないかと思われるのです。

また、今回の記事では、次のような問題点も指摘されています。

さらに、負債の大きさと設備の老朽化も大きな問題だ。上下水道事業の起債残高は、公営企業債残高の半分以上を占め、自治体財政を圧迫している。こうした状況のなかで、高度経済成長時代に整備されて老朽化した上下水道管の更新費用が2025年までに約113兆円を必要になるとの試算もある。

広島市の場合でも、例えば、平成19年度の水道事業会計決算審査意見書では、昭和40年代から昭和50年代にかけて、多くの水道施設が建設されており、今後順次、耐用年数の経過等に伴う更新時期を迎えることから、これら老朽化した施設を計画的に更新していく必要があることが指摘されています。

また、今後とも、経営環境は大変厳しいものと予想されるわけですが、そうした中で、健全な経営を維持していくためには、抜本的な財務体質の強化策に積極的に取り組む必要があるのではないでしょうか。特に、財政上の余裕が全く見いだせない広島市において、今後、どのように対処していくつもりなのでしょうか。早急に検討していかなければならない課題だと思います。「財政の再建」を成し遂げたと胸を張って言えるような状況にはないのではないかと思うのです。

今回の記事では、こうした問題点を、わが国の上下水道事業は抱えていることから、国においては、民活を積極的に進めるため、各種規制緩和に着手しているものの、それが進展していない原因を、多くの自治体がこの問題を先送りにしていることにあるとした上で、

実際、「包括委託など民間活用を進めるということは自分たちの仕事を減らすこと」(自治体関係者)であり、入札から契約まで、「前例のない仕事が降り掛かってくる」(同)ことにもなるわけで、自治体の動きは鈍い。

一部、先進的な自治体の成功例はあるものの、安易な民間活用による失敗例もすでに出始めている。例えば、ある自治体では、現場を知らないトップの判断で、価格面だけで安い委託業者が選定された。…水道局の局長人事は…水道事業の経験がないことも珍しくない。その結果、夜間や休日に委託業者の従業員から、現場の水道局職員のもとに「指示を仰ぐ電話がひっきりなしにかかってくるようになった」。価格だけで委託業者を選んだために、結局自治体側が疲弊してしまったというわけだ。

といった指摘もされています。

確かに、「前例のない」ことからの回避といったことから、民間活用が進んでいないことが事実であれば、それはもちろん論外であり、是非改めていただきたいと思いますが、それ以上に、ここでも述べられているような、価格だけで選ぶ、安ければいいという今の入札制度は見直すべき時期に来ているのではないかと思います。

「安物買いの銭失い」ということわざがありますが、市民共通の財産である公共施設の整備や管理に当たっては、目先の利益に左右されることなく、安心・安全な市民生活が確保されるようなシステムに改めていくことが、市民の利益につながるのではないでしょうか。

今回の記事は、

このままでは、誰が日本の水道の責任を負うのでしょうか。将来を考えると不安です。官か民かなどという問題ではすでにないのです

といったある地方自治体の職員の言葉で閉められていますが、地方行政の現状を考えますと、これは上下水道事業だけに限ったことではないと思います。

是非とも、住民福祉の向上という行政の原点に立ち返って、今後の施策を、それもその場しのぎの対応ではなく、長期的な視点に基づいた、総合的な施策を構築していただきたいと思うのですが、皆さんは、どのようにお感じでしょうか。