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(No186) 平成18年8月22日

『地方自治とは何か』

竹下虎之助(前広島県知事)著の『地方自治とは何か〜竹下虎之助回顧録〜』(現代資料出版)という書物があります。これは約半世紀にわたって地方自治、特に広島県政に携わってこられた氏のオーラル・ヒストリー(東京大学の御厨貴氏によると「公人の、専門家による、万人のための口述歴史」)となっていますが、中でも広島市政にかかわる部分は大変示唆に富むものとなっていますので、紹介してみたいと思います。

まず、都市づくりに対する広島市の姿勢に関するものです。竹下氏は『サイエンスパーク整備のねらい』の中で、「広島県内において広島市との機能分担というのは、東広島開発のときには、どういうふうにお考えだったのですか」という問いに対して、次のように述べています。

広島市というのは、まったく市長もしょっちゅう替わって、荒木さんのあとは平岡くんになったり、今の先生になったりしているんですけど、なんというか、こぢんまりと我が道を行くというかっこうになっておって、何法に基づくなんとかをしてみたいという希望はぜんぜんないんですよ。

どうして広島市を指定せんかというのもないんですよ。・・・テクノポリスとして全国的に三十いくつが立候補したと大騒ぎをやっているのは、新聞にしょっちゅう出ているし、わかっているはずだけど、広島市からは別段、うちをどうこう入れてくれとか、どうしてせんのかとかいうことはないです。

また、政令市移行に際しては、

企画とか調整の仕事が弱い。広大そのものの移転とか、空港に出て行けなんて話は言語同断なわけで、企画行政とか、統一的な市のポリシーというのが全然ゼロだったということです。(略)当時、運輸省航空局へ私らがしょっちゅう行って議論したですけど。広島市っていうのは何するんですかねとか言って。


とも指摘しています。

こうした氏の見解については、時代背景ということがあったかもしれませんし、また、県の立場からの見方ということが言えるかもしれませんが、そうしたことを割り引いたとしても、今でも、十分傾聴に値する指摘ではないでしょうか。

また、街づくりを効果的、効率的に進めていくには、広島市だけでできることは高が知れています。現行制度の下では、国・県の協力、支援、協調が何よりも大切なわけですが、そのことについても、竹下氏は、『永野県知事と山田市長が二人三脚で行った都市基盤の充実』の中で、永野県知事の言葉として明確に述べています。

今の広島市のやったことで、戦後最大の功績は商工センターの埋め立てをやって、あそこに流通団地をつくった。・・・広島市でひとつ長期の発展計画というものを今後出来るとするならば、水の確保と土地の確保というのをなくして広島の発展なんてありませんよと口説いて、市にその気にならせて商工センターと温井ダムを作らせたこと。

さらに、

動物園・植物園のことですが知事、市長二人で決めているのです。・・・少しは楽しい70万都市とか100万都市とかになればね、それにふさわしいことを市長さんやらにゃね、呉や三原と変わらんよ。

県は大体育館と24時間制の温水プールを、市民に開放出来る一部の水泳選手を育てるプールでなしにね、いつでも365日、誰でも行けるようなプールをひとつ分担でやってくれという。よし分かったと。ということで、市が動植物園を、県が体育館と室内プールを作ることになったこと。

そして、広域合併に関しても、

私が総務部長の時に、永野知事が山田さんにレクチャーに行けというからね、何回か行ったんですよ。・・・広島市はいずれこのまま投げとけば、岡山よりも人口少なくなりますよと。広島市の周りの町村が人口増で、現に府中でも五日市でも祗園でも5万を超えてる。

祗園市を作るよとか五日市市を作るよと府中市を作るよと言われた場合に、法定要件というのは広島市のお隣の町は三つとも揃ってます。その上に海田だって市になりますよと。そうすりゃ、いよいよ広島市っていうのは発展するとこないし岡山市に負けますよと。周辺の町村に金使うとか水道とか下水とか道路とか一緒にやろうとか・・・何とかかんとか考えないとだめですよと。それはもうその通りと。全面的にお前の言うことに賛成だと。


というようなことで、県・市が協力して広域合併を進めていったことが述べられているのです。

さらに、『今後の地方自治の展望〜道州制に向けて(1)〜』の中では、現在の街づくりに当たって、別の角度からの指摘もされています。そこでは、道州制導入後の州都について、広島市か岡山市かという議論があるがどうかという問いに対して、広島市には優位性はあるものの、その一方で、次のように述べられているのです。

岡山では、岡山駅を中心にして、北側では公共、南側では商業ベースで、手分けして、拠点性を高める思想統一が終わっている。駅中心に質を高くする計画になっている。非常にシンプルではあるが、わかりやすい、時代に合った計画となっている。・・・広島には、それがない。県・市で思想を統一して、広島の飛行場を残すのか、残さんのか、南道路の工事は進んでいるんだけど、橋をどうするかという。・・・そういったことを具体的にするのに、長年かかっても、意見が合わない。

大規模なインフラについて、空港や飛行場、南道路といった高速道路についても、ひとつも工事が進まんわけです。そういった点が岡山との差になっていますね。かなり出てくると思います。・・・県のほうは知事以下、これではいかんから何とかせないかんという意欲を持っているでしょうけど、市のほうへ投げ出したときに、打ち返しの反応がないんじゃないですか。県の幹部に言わせますと、『市のほうがまとまらんのですよ』とかいうので、そういう感覚のようですし、市のほうから県へもってくるというのがほとんどない。

これは、市行政の街づくりに対する姿勢を如実に現わしています。目先の利益しか目に入らないから、また将来の明確なビジョンがないから、話し合っても決断がつかないのです。決断できないと分かっているから話し合おうともしないのです。こういった状態がここ十数年続いており、特に秋葉市政になってからそれが顕著になっています。

特に、広島市の場合は、ただ単に115万人の都市ではないはずであり、広島市には、周辺圏域の伸長をも含めた都市の経営、都市づくりが求められているのです。そのためには、将来を予測し、確固としたポリシーを持って、果敢に挑戦していく姿勢が必要であり、為政者には県や周辺と協調しながらその責務を果たす義務があるのではないでしょうか。

最後に、秋葉市政に対して、竹下氏は次のようなことを述べられています。

やっぱり平和行政その他をこれから先も考える場合に、秋葉さん自身も、会議でアメリカへ腰を上げて行くとか、ニューヨークへ行くということばかり言わないで、市自体が平岡さんの時の創り出す平和を中心にしてやるべきではないか。私はそんな感じを受けます。

これは市政を担うトップの姿勢として相応しいものかどうか、もはや論をまたないということを暗に述べられているのだと思います。為政者として、基本中の基本がなされていないということは、広島市がいかにさまよっているかということです。広島市政を本来の姿に戻さなければ、都市づくりにとって、本当に取り返しのつかないことになるのではないかと危ぐするわけですが、皆さんはいかがお感じですか。