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(No180) 平成18年7月26日

『ネーミングライツについて』

ここ数年の広島市政の話題性を探ってみますと、上位に来るのが何と言っても新球場の建設問題ではないでしょうか。広島の元気のなさが問題視される中(『元気です、広島』という能天気な本を出版される方もいらっしゃいますが…)、貨物ヤード跡地への新球場の建設は、闇の中に灯る一点の光明にも値する事業と、市民の期待も大きかったのではないかと思います。

今日までこれといった成果を上げることができず、八方塞となっている秋葉市政の中で、何とか成果を上げたいとの思いも垣間見え、せめて建設に向けた姿勢だけでも見せたいとの気持ちも分からないではありません。しかし、気持ちは空回りして、その度合いも次第に大きくなり、挙げ句の果ては責任の所在探しに東奔西走といったところが現状ではないでしょうか。

少し遡りますと、最初のコンペであるエンティアム案が破棄され、さらに、今度こそはと意気込んで開催した共同企業体の事業コンペも防衛施設庁の官製談合事件の影響を受け、市民の夢が打ち砕かれたのです。そして、今度が三度目となる設計コンペです。短期間のうちに実に三度目となるコンペです。

私は、「この事業は拙速に進めるべきでない」と警鐘を鳴らし続けてきたわけですが、このような時であるからこそ、現球場を建設した先人たちの思い、歴史の大切さ、重さということについて、もう一度原点に立ち返って考え直し、冷静に計画の良し悪しを判断し直すべきではないでしょうか。

コンペの度ごとに規模は小さくなり、確証の持てない「球場建設費の90億円」や意味の希薄な「世界に誇れる」といった言葉だけが飛び交い、「建設の姿勢だけ見せれば…」という市長の思いに、市民もいささかウンザリの感が否めないのではないでしょうか。しかし、ここは、将来の広島市民・県民の財産を決めるときです。是非とも、より慎重で公平な判断を望むものです。

そして、このことは、今回のテーマであるネーミングライツ(市民球場と新球場の命名権)の取扱いについても言えることです。特に、市民球場のネーミングライツについては、にわかに降って湧いてきたような問題ですが、今や、市民や経済界などに大きな波紋を広げつつあると言っても過言ではないのです。

事の発端は、今年の5月、地場大手の常石造船が、広島市に対し、市民球場のネーミングライツ購入を打診したことに始まりますが、直後に、イズミや章栄不動産もその意向があることが伝えられていますし、広島郷心会の金井会長もマツダ鰍ノ名乗りを上げるよう提案したという報道もされています。

そうした民間の動きに呼応する形で、広島市は、6月1日、市民球場運営委員会を開催し、その導入の是非について議論しています。その中では、「長年親しまれた名前が消えることは抵抗がある」とか「収入の使途が明確でない」といった懸念の声も上がったものの、一応、前向きな姿勢が示されたそうです。

そうした議論等を踏まえ、先の6月定例市議会では、市民球場へのネーミングライツの導入に対して、「広島市民球場はその名称で既に50年近い歴史を有している」「広島市民球場運営委員会においても、その導入には基本的に賛成であるが、『広島市民球場』の名称も残すなど、その歴史に配慮する必要があるといった意見もある」「収入の使途や導入する場合の公募条件、さらには、市民球場は国有地にあることから、中国財務局との調整なども必要であり、こうした課題を整理しながら、議会や市民、ファンの意見も聞いた上で、慎重に判断したい」といった広島市の考えが示されていますが、このやり取りは明らかに行政が困惑しているとしか思えません。

広島市としては、状況があまりにも性急かつ複雑すぎて、事の良し悪しの判断が出来ず、責任を伴う決断はできない状況にあるということではないでしょうか。市民球場設置者であり、管理者である広島市の態度がこのような状態でいいのでしょうか。

そもそも、ネーミングライツとは、公共施設に企業名や商品ブランドなどを冠する権利を与える代わりに、施設運営者が企業から代金を受け取るもので、1990年代後半から、アメリカにおいて広がったものです。さらに、アメリカ・メジャーリーグでは、1994年以降の11年間で13の新球場がオープンしていますが、ほとんどの球場で、建設費の6割以上を地元自治体が負担する一方で、球場内の興行や広告収入に加えネーミングライツに係る収入は球団側が手にできるという、まさに球団にとって新球場は「打ち出の小づち」といった報道もされています。

反対に、日本では、2000年代前半から赤字の公共施設の管理運営費を埋め合わせる手段の一つとして導入されているようであり、その主な導入施設としては次のようなものがあります。

これらの契約期間は2〜5年で、契約額は年間約6千万円から高いもので5億円という状況のようです。昨今の地方自治体の厳しい財政状況を考えれば、ネーミングライツによる収入は、新しい財源として確かに魅力があるとは思います。

しかし、広島市民球場にこうしたネーミングライツを導入することが果たして適当なのか甚だ疑問があります。それは、「市民球場」にはその建設に当たっての特別な経緯、歴史があるからです。また、市民・県民の球団である「カープ」の本拠地としての強い思い入れもあり、さらには、平和記念公園とともに、原爆で壊滅した街の復興の象徴でもあります。「市民球場」は、単なる市営の球場ではなく、市民やカープファンはその原点を決して忘れてはいないのです。

そうした特別な経緯があるからこそ、「市民球場」という名称が最もふさわしく、私たち広島市民とカープファンにとっては、ネーミングライツという対価の対象にすべきではなく、「市民球場」という響きそのものも広島市民とカープファンにとっては最高で最良の名称であると思うのです。

最近、「アイデンティティ」という言葉がよく使われていますが、お金のために、それを手放すようなことがあってはならないと思います。広島市には、強い意思と確固たる思想を持って、「市民球場」のネーミングライツ問題に対処してもらいたいものです。

また、新球場についても、特別な事情があるように考えます。新球場建設の基本理念を思い起こしてください。その第一には、「カープが、広島を本拠地として活躍し続けて欲しいという市民・県民はもとより、全国のファンの熱き思いを大きな推進力として、行政、経済界、市民・県民等が力を結集して事業の実現を図る」ことが謳われています。ネーミングライツの導入を前提に考えた場合、果たして、この理念のように、行政、経済界、市民・県民の三者が力を結集して、事業の実現を図ることができるのでしょうか。

事業の基本に返り、球場の広告料、関連事業からの売上げ、このネーミングライツ等々、球団と広島市との金銭の配分問題も市民に分かりやすく明示しなければならないのではないでしょうか。諸々の問題を一つずつ解決しない限り、ネーミングライツの導入は、相互扶助の関係を崩すことになりかねないはずです。

新球場の建設に当たっては、何にも増して、行政、経済界、市民・県民と広島東洋カープがまさに三位一体となり、市民に分かりやすい球場経営に取り組むことを第一に考えていかなければならず、そのことが、新球場建設の基本理念を具現化することに繋がるのではないでしょうか。

さらに、カープ球団にも、要請しておきたいことがあります。当初の新球場建設気運の盛り上がりは、プロ野球界の再編論議の中で、「カープが広島からなくなるのではないか」といった危機感が芽ばえ、新球場を早く建設してカープに頑張ってもらい元気な広島を取りもどしたいということであったと思います。そこには、カープが地域に根差した球団の先駆けであったこと、市民・県民の球団でありプロ野球界にとっても貴重な存在であったという自負があるからではないでしょうか。

そうであれば、現在のカープの正式な球団名は「広島東洋カープ」ですが、新球場の完成の折には、球団名から「東洋」を外してはどうでしょうか。松田家の会社創業時の名称の中の東洋コルク工業、東洋工業からの「東洋」かもしれませんが、現在では、「東洋」の名称自体、意味不明となっており、その由来と聞かれても正確に誰も答えることはできません。外すことにより、現在の流行でもある簡単・明瞭で分かりやすく親しみやすい名称になり、真の市民・県民球団として、名実とも生まれ変われるのではないかと思います。是非、一考をお願いしたいと思います。
   ネーミングライツに関連して、種々申し上げましたが、皆さんはいかが思われますか。