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(No.94) 平成16年2月6日
   
『太田川放水路渡河部の早期事業化について』

 広島南道路の太田川放水路渡河部の事業化については、その構造が決定しないことがネックとなり、全ての事業がストップしている状態が続いています。平成14年11月には、広島市が構造と事業費、事業プログラムについての新たな考え方を取りまとめ、国、県等と協議する旨を発表しましたが、その後の進展も特に見られません。
 事業費の多寡が、現在の財政難の中で早期事業化を妨げているわけですが、ここではコスト縮減にかかる抜本的な対応について、事例を上げて申し述べたいと思います。

 まず、平成14年11月に広島市が示した構造と事業費、事業プログラムについての比較表を掲げます。

広島南道路太田川放水路渡河部の構造別比較

区   分

従前の試算値

【8車線同時完成の場合】

平成14年11月の見直し値

【自専部4車線先行整備の場合】

事業費

工 期

事業費

工 期

沈埋トンネル方式

約930億円

約8年

約490億円

約7年

橋梁方式

約580億円


橋梁工事のみで

約5年

約560億円


飛行場改良工期と合わせて

約7年

橋梁

(280億円)

(210億円)

[付帯事業]

飛行場改良

(300億円)

(350億円)


 この表の「自動車専用部4車線先行整備の場合」の事業費の見直し値についてですが、従前の試算値と比較して、事業費は『沈埋トンネル方式』の方が『橋梁方式』よりも安くなり、この数値だけを捉えれば、既に『沈埋トンネル方式』で早期整備を図る方向は見えていると言えます。
 もちろん将来整備を含めたトータルコストの問題は残りますが、事業遅延による様々な社会的・経済的損失を考慮すると、都市計画決定どおり(沈埋トンネル方式)早期事業化を図る方が優位に立っていると思われます。

 ここでもう一つ申し上げたいことは、さらなるコスト縮減の方法を検討すべきではないかということです。その方法とは、金額の上限と工法、期間も含めた提案型の入札方法を採用したらどうかということですが、羽田空港の沖合展開で既にその方向性が示されていますので、その概要を読売新聞(H14.10.12)の記事を引用して紹介します。

 羽田新滑走路では、総事業費約8,000億円規模の巨大プロジェクトの工法を巡って、それぞれ異なる工法を主張する建設業界と造船業界の受注合戦が激化。

 建設業界が「埋立と桟橋の組合せ(ハイブリッド)方式」や「桟橋方式」を、造船業界が滑走路自体を海に浮かべる「メガフロート方式」を提案し、国土交通省の工法選定会議でも結論が出なかったため、「工法について入札で決定する」という極めて異例の入札方法を採用することにした。

 この方法は、工法も含め設計から施工までを一括で一般競争入札にかけるもので、この方法によると、企業側は国に対し、設計の変更を理由とした事業費の追加を原則として要求できなくなるとともに、完成後の維持管理費の保証も求めるため、業者がコストの精査を迫られ、公共事業費の抑制にもつながるという。

 国土交通省は、今回のケースを公共事業のコスト削減のモデルケースとし、他の事業にも浸透させていく意向を示しているようですが、太田川放水路渡河部についても、発想を転換し、根底から見直すことに着手すべきではないでしょうか。

 このような方法が採用された背景には、公共事業のコストが高額、かつ不透明と言われていることにも起因していると思われますが、それを裏付ける話が、同じ羽田新滑走路の構想段階のいきさつに見られます。
猪瀬直樹氏の『一気にわかる!空港の内幕』から抜粋して紹介します。

 羽田の再拡張では、当初、1兆3,000億円から1兆8,000億円の事業費で、工期も8年から12年と見積もられていた。しかし、その後、日本造船工業会がメガフロート工法を開発した。メガフロートの場合、コストが5,300億円と割安ででき、工期も2年半である。業界を震撼させた数値である。

 その後、工法評価選定会議で信じられない出来事が起きた。それぞれの業界から三つの工法、「埋立て工法」「桟橋工法」「メガフロート工法」が提案されたのだが、「メガフロート工法」は5,300億円(工期2年半)で、「埋立て工法」も建設費5,570億円(工期2年半)、そして「桟橋工法」も5,640億円(工期2年半)だった。

 ここで誰もがなぜだ?と思うだろう。1.5兆円前後であったものが5,000億円台に、半減どころか3分の1になってしまうのなら、当初の見積もりは出鱈目ということになる。


羽田空港再拡張事業費

当初見積もり

第6回首都圏第三空港調査検討会
(H13.7.31)

工 法

事業費

工 期

埋立て

1兆3,000億円
 〜1兆8,000億円

8年〜12年

                     メガフロート工法浮上
(浮体式海洋構造物

見直し比較案

第2回羽田空港再拡張事業工法評価選定会議

(H14.4.16)

工 法

事業費

工 期

メガフロー

5,300億円

2年半

埋立て

(一部桟橋)

5,570億円

2年半

桟 橋

5,640億円

2年半


 以上羽田新滑走路の事例を紹介したわけですが、この方法は、単にコストの問題だけでなく、受発注過程の透明化の面においても、画期的ともいえるシステムだと思います。
 国土交通省は、平成16年度航空関係予算に、入札・契約手続き等の検討調査費など約107億円を計上しています。また、概算要求・予算編成過程で10パーセントのコスト縮減を図られ(民間からの提案や大規模発注による)、最終的な滑走路整備事業費は約6,900億円と見積もられたようです。
 太田川渡河部においても、早期事業化に向け、すぐにでも検討を深めるべき問題と考えますが、皆さんはどのように思われますか。


(追伸1(「総務」型から「企画」型へ))

 東京大学助教授の佐藤俊樹氏が、最近の政治スタイルの変化を、「総務」型から「企画」型へ、と述べられています。『国政ひろば』2月号への寄稿ですが、一部を抜粋して紹介します。

 元来、日本の政治は「総務」型だった。人間関係を大事にして、利害調整を図る。時には、泥をかぶるのも厭わない。そういう営みが政治であった。それが今や「企画」型に移りつつある。魅力的なプランでみんなをひっぱる。政治家に要求されるのも、かっこいいフレーズとまあまあのルックス。当然、学歴も高い。

 「企画」型の政治を担うのは、NPOや市民一人一人の手づくりの運動である。それは確かに美しいが、かなり贅沢な美しさでもある。有給休暇を取って一週間なり二週間なり選挙を手伝うといえば美談だが、今の日本ではそれだけ休める人はかなり恵まれている。手づくり品が高いのは政治の世界でも同じ。それだけのコストが払えない人は、選挙でしか政治に参加できない。

 「総務」型は違う。集票マシンは選挙のときだけ活躍するわけではない。むしろ選挙と選挙の合間に、「次の選挙では…」という殺し文句で自分の主張を実現させるところに真骨頂がある。マシンが加わるコストも低いから、庶民でも手が届く。票集めの道具にされるが、それでも利害が完全に無視されることはない。

 どうもこの辺は誤解があるようだ。「企画」型政治は本当は敷居が高く、恒常的に政治に参加できる人は限られる。その分、政治家は自由にふるまえる。あちこちの支持団体に気を使う必要はなく、自分の理想を追求できる。だから「政権公約(マニフェスト)」を守るなんて当たり前。そもそも「企画」型では他に政治家をしばるものがないのだから、約束ぐらい守ってもらわないと独裁政治になりかねない。

 「企画」型では、政治家は汚れ(ヨゴレ)にならずにすむ。きっと、これから政治家は人気職業になるだろうし、子供たちの「憧れの仕事」になれるかもしれない。けれども、その分、庶民には手が届かなくなる。政治家になりにくいだけではない。政治家に声を伝えることも難しくなる。

 以上紹介しましたが、皆さんはどのように思われますか。
 いろんな見方があると思いますが、要は、多くの有権者の声を的確に行政に反映することが政治家に求められているのであり、また、有権者はうわべの事象だけに惑わされることなく、真実を見抜く眼力もつけて欲しいということだと思います。
 筆者もそうしたところを気にかけての寄稿だと思います。
 


(追伸2(管理職の自己診断支援制度))

 この度、「管理職の自己診断支援制度」が実施されるようです。この制度は、部下が上司(管理職)の日頃の行動特性等について診断し、その結果を上司に開示することにより、管理職の意識改革の促進と能力の向上を図ることが目的のようです。

 この制度の効果がどの程度あるのかは、今の段階ではよく分かりませんが、最近、「市の職員は元気がない」とか「職場の雰囲気が暗い」との声が、市民の皆さんからよく聞かれます。
 財政状況が悪くなり、これまで進めていた事業が中止になったり、方向が見えなくなったことも原因かもしれませんが、組織の風通しがうまくいっていないことが一番の問題だと思います。

 私もこのホームページで、組織が機能していないことは度々申し上げました。特に、財政状況をにらんだプロジェクト調整では、組織間の横断的な取組みがなされていないことや、個別プロジェクトの推進にあたっては、トップと特定職員とのやりとりだけで進めていくなど、組織としての仕事がなされていないことです。

 こうした市役所の姿は第三者の目にも奇異に写っているようです。2月6日の中国新聞には、公共事業の見直しにかかる市長と職員との関係を「ねじれの構図」と指摘されていました。トップが職員との意思疎通を欠いたまま少人数だけで事を進める構図は独裁政治に陥りかねない危険性さえはらんでいます。

 今回の制度が、まさに部下が上司を評価し、問題点を上司に気づかせ、風通しのよい職場を目指すことも意図しているのであれば、市長も例外ではないはずです。市長は、選挙の時に評価されるのだと言われるかもしれませんが、日常的な行動特性等は市民には目が行き届きません。

 市民のために日々の業務を遂行しているのですから、せっかくこういう制度を導入するのであれば、対象を局長、部長、課長だけとはせず、市長も含めて制度を実施した方が、よほど効果が期待できると思います。
 評価を恐れず、思いきって実施されたら、案外安心されることもあるのではないでしょうか。ついでに市民に開示されたらどうかと思います。
 職員の皆さん、いかが思われますか。