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(No.75) 平成15年10月14日 『企業誘致とトップの決断』

(その1)…北川前三重県知事の決断
 『ガバナンス10月号(ぎょうせい)』に、前三重県知事の北川正恭氏(現在は早稲田大学大学院教授)が投稿されていました。「地方分権シンカ論」の見出しで「先延ばしせず、結論を出すのがトップの責任」と述べられています。

 要点を紹介しますと、北川前知事は、まず「企業誘致における前例のない大型補助制度創設(90億円)を例に、首長の政治的決断の手法を考えてみたい」と前置きされ、シャープの第3工場の早期建設の要望活動の実例をもとに「企業誘致では担当者を企業に張り付け、つらい話も含めて交渉を行った」と述べられています。
 当初は9人でプロジェクトをスタートしたが、頼るべき国の省庁もなく初めは皆ノイローゼ気味になった。しかし、すぐ回復し、市や町、民間企業へ出かけ、叱られながらも進化してきた、と発足当初の苦境と職員の仕事ぶりの進化を語られています。
 90億円出して、官だけで1万2千人を超える雇用効果があるわけでもなく、また4千億円の出荷額を上げることはできない。情報公開し、民の力を借りる方が実現性が高い。こちらが決断しなければ、工場は中国に行っていた。決断に当たって最も重視したのが雇用効果だった。また、このプロジェクトは県職員にも大きな影響を与え、自分たちの力でできることを示した、と評価されています。
 このように、北川前知事は国内企業にターゲットをしぼって、実際に職員を企業に張り付け、情報収集しながら意思疎通を図り、最終的には自らの責任で決断し、実現に漕ぎ着けたわけです。

 翻って、広島市が今行っている企業誘致は、海外企業の投資促進に目が行っており、その活動も単なる要望のみで終わっているようです。
 加えて、全世界が不況の中、イタリアにしても、フランスにしても、また、ドイツ、ロシア、アメリカ、中国、韓国もどれほど広島という土地に魅力を感じているのでしょうか(もちろん企業誘致だけで行かれているのではないことは承知しています)。企業誘致のための補助や援助、税制上の優遇措置などインセンティブがないところに海外の企業が来るわけはありません。
 広島が真面目に、そして本気で企業誘致を考えるのであれば、三重県のように国内企業へ直接赴き、誠意を持って、根気よく、責任をもって交渉する道しかないと思います。
 市民に派手に映ることのみで行動していても、決して実を結ぶ結果にはなりません。市民が今何を求めているのか、それを達成するためにはどのような過程を経て、結論に導いていくべきなのか。こうしたトップの決断が市民の暮らし向上のためには必要であるはずなのに、今の広島に最も欠けている点だとは思われませんか。



(その2)…三菱重工の挑戦−小型ジェット旅客機開発
 前述した「企業誘致とトップの決断」に関連して、ここでは、まず一冊の本を紹介します。
 『国産旅客機が世界の空を飛ぶ日(前間孝則著)』という本ですが、最近、日本国内における小型ジェット旅客機開発のニュースが相次いで報じられており、三菱重工などが国の支援を受けつつ、自らの決断とリスクをもって、1〜2千億円の資金を投入しようという動きが綴ってあります。
 以下、この本を引用しながら、個人的な思いも交えて紹介します。

 三菱重工の小型ジェット旅客機(30〜50席)の開発決定に続いて石川島播磨重工業も小型機(50席)を決定している。また、富士重工も米メーカーと提携して10〜15席クラスの小型機を開発すると発表。さらに、自動車メーカーのホンダが「新たなる挑戦」として参入宣言しており、新風を起こす可能性もある。
 YS11(66席)が初飛行してから41年が経ち、その後三菱重工や富士重工が小型機を開発したものの早々に市場から撤退した。何故ここにきて矢継ぎ早にプロジェクトが立ち上がるのかということだが、桁外れのリスクが伴うものの、今自らの判断で世界の市場に打って出なければ、日本の航空機メーカーは衰退あるのみで、ラストチャンスと判断したのだろう。
 日本は、航空機を作り上げるほとんどの技術は持っており、経済力もある。一番のネックは開発費であり、さらに問題なのは何機売れば採算が取れるのかという損益分岐点が明確でない点だ。因みに、300席の旅客機の開発費は約5〜6000億円で、少なくとも1000機以上は売らないと採算は取れないらしい。
 しかしながら、小型旅客機となると話は違う。開発費は抑えられるし、国の支援もある。今取り掛かれば、企業の潜在的な力を発揮することができる。

 ただ、小型機の市場が開発に見合うものになるかが重要なことは言うまでもない。

 そして、本の後段部分に「三菱重工の挑戦−いかにして飛ばすか」と題して、官民の戦略が書かれています。

 経済産業省は30〜50席の小型ジェット旅客機の開発を決定。IT技術をふんだんに取り入れ運航コストを大幅に圧縮。開発は2003年度から5年間で、開発費500億円は官民で折半。やる気のある企業を支援。
 石原都知事は「アジア大都市ネットワーク」で中・小型ジェット旅客機の開発を提唱し、強力に働きかけ。
 航空機需要の予測では、100席前後のクラスが最も需要が多く、開発の重点は大きいクラスへ移動しており、30〜50席クラスはニッチとなっている。
 これまでは、30席までの小型機になると、効率性の面からジェット機はターボプロップ機には勝てないとされてきたが、日本が最新技術をふんだんに盛り込んで開発すれば、ジェットのスピードという利を生かして市場に食い込める。
 市場については、アジア市場の他、世界の数十席クラスの市場の半分を有するアメリカ国内の小型機市場を念頭において計画すべき。
 国レベルでは、2003年9月2日に経済産業省、防衛庁、文部科学省、国土交通省による民間航空機開発推進関係者省庁協議会が設置された。
 ライト兄弟が初飛行に成功して100年になる今年、三菱重工は再挑戦のプロジェクトをスタートさせた。既に準備は急ピッチで進みつつあるが、この3〜4年のうちに、三菱のロゴマークがついた小型ジェット旅客機が世界の空を飛ぶのか、その答えが出るだろう。

      

 

 以上のような内容ですが、今のチャンスを逃すまいという三菱重工の意気込みが伝わってきます。それと同時に、こうした動きに国も後押ししようとしているわけですが、自治体にとっても企業誘致という千載一隅のチャンスが到来しているわけです。
 私のホームページでも今年の3月13日と7月19日に述べましたが、この三菱重工の動きは、広島経済界にとっても活力を取り戻す大きなチャンスです。航空機産業の主力工場は名古屋の小牧にありますが、既に容量オーバーの状態です。広島における航空機の部品組立という実績と自動車産業で培った高い技術力とノウハウを今まさに生かすチャンスが訪れているわけです。官民で強力に誘致に動かない手はありません。
 しかしながら、広島のトップはこうしたところに動く気配は全くありません。目をやるのは海外における成就の見込みのない企業誘致や平和の運動ばかりです。もちろん海外行脚も時には大切でしょうし、平和を訴えてまわることも必要なことであり、私も全て否定しているわけではありません。
 しかし、世界に羽ばたけるような産業を広島に生み出して、その実績を上げ、内外に「広島ありき」を示すことが、広島の国際化にもつながり、また、地方分権に相応しい地方の活力醸成にもつながるのではないでしょうか。