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(No.58) 平成15年7月8日 『アストラムの方向』

 6月12日の産経新聞に三セク特集の記事がありました。「大阪市の三セク債務超過、5社で600億円超す」「三セク側は特定調停を申請、再建策の合意を取り付けたい意向」「多額の借金棒引きを迫られる銀行側は反発」「議会も市の負担増につながりかねない」等々三セク再建の前途多難な様子が克明に書かれています。

 こうした中、広島市も6月議会で205億円のアストラムの支援策を決めました。種々議論はありましたが、市北西部と都心を結ぶ基幹交通をつぶすわけにはいかないということで、やむを得ない措置でした。しかし、如何に社会的役割が大きいといっても、今後、無制限に税金を投入するわけにはいきません。
 今回の支援で、高金利の利息負担は解消でき、損益面、資金面での危機は一応回避できたわけですが、今後は単なる一会社の経営改善としてではなく、行政や各交通事業者が一体となって公共交通全体の利用促進のための「改革」に取り組んでいく必要があると思います。

 こうした状況のもと、当の広島高速交通鰍ェ再出発しなければならない時、同社の社長に就任された中村氏の発言は、交通事業に関わる一責任者として、その見識と力量に疑問を抱かざるを得ません。新聞情報ですが、「JRと乗換えが簡単にできないのは利用者にとって大変不便」「白島地区にJR駅が新設できるよう関係機関と協議を始める」「使いやすさを重視し公共交通として利用者の忘れ物をインターネットで一元的に検索できるようにしたらどうだろうか」といった内容です。
 一見、利用者の立場に立った発言のように見受けられますが、同社が今すべきことは何かといったことを熟慮された上での発言とはとても思えません。

 これからすべきことは、より一層の経費節減に加え(但し、安全性保持の観点から限界あり)、本来の経営改善策である利用促進・収入増加策です。何故なら、アストラムが債務超過に陥った原因は、利用低迷が経営不振の構造的要因であったはずだからです。
 市北西部地域の交通問題が叫ばれていた時は、沿線の団地が次々開発されていました。その団地も今は成熟化し、今後多くの通勤客は望めません。また、アストラムの輸送実態をみると、朝ピークは1時間当たり7,500人を運んでおり、これは全国の新交通等の中でもトップということであり、朝ピーク時の輸送能力は限界に近いはずです。
 したがって、今後の利用促進・収入増加策は、現在の輸送能力の中でピーク時以外の潜在需要の掘り起こしに着目すべきはずです。

 こうした課題に向かって対応していくべき時、新社長が発せられたのが前述の内容です。
 仮に、JRが白島に新駅をつくったとしても、アストラム駅と直結しスムーズに乗り換えができなければ、とても利用増につながるとは思えません。まさか、地下構造となるアストラムの新駅でもつくろうというのでしょうか。そして、仮にこれらの課題がクリアできたとしても、前述したように、朝ピークのアストラムは既に輸送能力が限界の状態です。現在の6両編成を増両するとしても各駅に構造上の問題を抱えています。
 つまり、こうしたことを考慮したとき、先ほどの新社長の発言はあまりにも軽率としか思えません。一番求められる利用促進・収入増加策には実質的には一言も触れられていないといってもいいでしょう。

 市が策定した「新たな公共交通体系づくりの基本計画」は、第一段階で、JR本線の西広島駅でアストラムと接続し、「広域交通とネットワーク化」するというのが大きな狙いであったはずです。加えて、道路が狭隘で防災上も問題のある己斐地区の環境改善に資するという「まちづくり」が大きな対応課題でした。
 こうした将来計画を知ってか知らずか軽々に発言されたことに行政も右往左往するようでは、己斐までのアストラムの延伸も絵に描いた餅に終わってしまうのではないでしょうか。
 己斐までの早期建設の目処も立っていない時に高額な建設費のかかる白島でのJRとの接続のアドバールだけを打ち上げることは、恐らく市長直伝のマスコミや市民受けを狙ったパフォーマンスとしか受け取れません。
 近藤JR西日本広島支社長は「費用負担をどうするかが課題」と言っていますが、この思いつきの構想はあまりに大きな課題を抱えています。とても投資以上の効果が得られるとは思えません。債務超過に陥っているアストラムの新社長が一番はじめにやらなければならないのは、まず、会社の体力をつけることです。そして、JRとの接続を望むのなら基本計画に位置づけている己斐までの延伸を着実に実現させることです。そのためにも、己斐中央線の測量が6月議会にも提案されたのではないでしょうか。

 この問題だけでなく、行政はごく一部の声に惑わされることなく、じっくり腰を落ち着けて、市民のための市政を推進していくべきだと思います。皆さんはどう思われますか。