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(No.22) 平成14年10月 1日 『貨物ヤード跡地と市民球場』

 貨物ヤード跡地利用に係る9月議会の答弁は、この7月に方針決定と称して記者発表された「事業のあり方と解決すべき課題」を繰り返されるばかりでした。厳しい財政状況を考慮した慎重な進め方と見る向きもありますが、この貨物ヤード跡地利用の問題に限っては、もはやそういった段階ではないのではないでしょうか。

 貨物ヤード跡地利用構想は、当初はワールドカップサッカー開催地誘致を視野に10年以上も前から検討され、ここ数年は野球場建設を前提に市議会特別委員会でも種々議論が交わされ、委員長報告でもその方向性を示し、さらにこの2年間はより具体性を持たせるための民間企業のノウハウを活用し、その民間企業連合体であるチーム・エンティアムからは「年内方針決定」というタイムリミットをつきつけられている状況です。
 民間企業は行政のように長期間かけて事業実施の是非を判断しないことは前にも述べましたが、明らかに今回の官民のプロジェクトを進めるスピードには大きなギャップがあります。
 同じ9月議会の答弁で、市長は大規模プロジェクトと財政問題に関する質問に対し、「次期実施計画策定過程において検討していきたい」と答弁しています。民間資金の活用可能なプロジェクトの決断時期をこの12月と迫られても、厳しい中で何とか限られた財源を最大限有効に活用しようという姿勢は全く感じられませんでした。

 経済界が言っている屋根架け案は、今の広島の経済情勢では実現できる代物ではないと思います。採算性をクリアするためには、当然入場料が高くなり、長年、カープを支えてきた固定ファンを遠ざけることになります。だからといって、公設公営は広島市の財政状況からいって不可能に近いと思います。屋根架けというシンボル性と広域集客性に軸を置いたために、このプロジェクトの方向づけが定まらず、事業そのものが終焉になるかもしれないことを早く多くの市民に気づいてほしいと思います。
 市長は、経済界の屋根架けの要望と市が財政健全化計画中であることを理由に、このまま政治決断しないで、チーム・エンティアムがこのプロジェクトから撤退するのを待っているとしか思えません。

 民間企業がビジネスチャンスに重きを置くのは当然のことです。
 市長はこの9月議会で、方針決定に際しての考え方について、アストラムラインの延伸計画を一つの例として上げられました。この延伸計画では「時間軸」という視点を取り入れ、計画見直しの機会を入れた段階整備のあり方を述べられました。段階毎の見直し決定に多くの市民が責任を持つという考え方も示されました。
 確かに30年スパンの計画では当然考えなければならない決定方式ですが、貨物ヤード跡地利用については、この「時間軸」の考え方は当てはまるものではありません。10年以上かけて検討しているこのプロジェクトがタイムリミットまであと3ヶ月を残し未だ時期さえも決まらないというのであれば、カープや市民のための野球場建設として、現広島市民球場を全面改造するしかありません。

 ここで、現在の広島市民球場の建設経緯とそれに対して周囲からどのような支援があったのか紹介します。9月議会で市長が言われた「熱き思い」が当時どのような形で表われていたか、お分かりいただけると思います。
 カープが誕生したのは昭和25年ですが、当時は「広島野球倶楽部」という名称で本拠地は「広島総合球場(現県営グランド)」でした。翌26年には球団の経営難を救おうとタル募金が始まるわけですが、市の中央部にナイター設備を作ろうとする機運は28年頃からありました。当時は広島だけデー・ゲームだったのです。また、親会社を持たないカープが独立採算をとれるチームになるには、ナイター設備を持つ球場を市の中央部に作って入場者の増加を図る以外になかったのです。
 こうした市民と球団の声を反映して、29年には市民球場建設促進協議会が作られ、「基町へ市税を使わず建設する」という結論が示されたわけです。同年、広島電鉄が2千万円を寄付したことをきっかけとして建設計画が具体化しましたが、一方では建設地に係る市営住宅立ち退き反対運動も始まりました。
 その後、市民やカープ後援会の建設促進の力強い声を受け、浜井市長からバトンを受けた渡辺市長や任都栗市議などが国との協議や国会議員への陳情を繰り返しました。そして、建設地問題に明るい兆しが見え始めた32年、渡辺市長が市の財界に協力要請し、財界10社から建設資金1億6千万円の寄付を受け、同年7月に「広島市民球場」が完成したのです。
 このように、やっと完成した広島市民球場には、市を上げた本当の「熱き思い」があったわけです。当時と今とでは環境が違うにせよ、貨物ヤード跡地で、こうした機運の醸成がこの数ヶ月でできるでしょうか。

 この広島市民球場は、幾度かの改修、増設工事を行い、現在では電光式スコアボードやアストロビジョンも備えていますが、貨物ヤードが進まないのであれば、現球場を本格的に大改造していくことを真剣に考えていかなければならないのではないでしょうか。
 スコアボードや照明、音響などの設備関係はもちろん、内・外野の椅子や、特にプロが試合する舞台として他球団に見劣るのが外野の芝生などグランドの構造です。また、ダッグアウトやロッカールーム、控室、医務室、記録室といった裏方の諸施設も改善が必要です。これらの全面改築について、当然ではありますが公設公営にならざるを得ないと思います。
 広島市民球場を現在地に残すかどうかは、紙屋町、八丁堀地区の活性化に大きな影響を及ぼします。都心拡大や広域拠点の形成も必要ですが、今心配しなければならないのは、中心市街地の空洞化や活力低下への対応です。
 もちろん貨物ヤード跡地をどうするのかという大きな問題は残りますが、それが決断できないのであれば、現広島市民球場の全面改築を推し進めざるを得ないと考えますが、皆さんはどう思われますか。