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(No.12) 平成14年6月14日
 『安全で安心な街づくりのための環境整備と将来ビジョンの構築について』

安全で安心な街づくりのための環境整備
 何年ぶりかにニューヨークに行った知人の話を聞くと、「街がすっかりきれいになった。」と驚いていました。地下鉄の落書きも少なくなって、公園でたむろしていたホームレスもほとんど見かけなくなり、これまで抱いていた「怖い街」「汚れた所」といったニューヨークのイメージが一変した、というのです。
 以前、NHK番組の『地球に乾杯』でも、「ハーレム・ルネッサンス―蘇れ黒人文化の街」と題して、スラム街が変貌するまち興しの特集を放映していました。この現象を、ニューヨーク大学教授の佐藤隆三さんは著書の『戦略なき日本、再生の知恵』の中で、次のように分析されています。

――共和党のジュリアーニ市長になってから、ニューヨークはすっかり変わった。それは、一つの社会実験からで、「凶悪犯罪を防止する最善の方法は、軽犯罪を徹底的に取り締まること」という新しい手法を採り入れたことだ。これまでは、抜本的な改革が必要ということで、悪の根源をたたきつぶす『直接手法』を用いてきたが、これに対し、同市長はこつこつと微罪や軽犯罪を取り締まることで街の雰囲気を改善し、人々に『法の目』を感じさせ、犯罪を起こしにくくする『間接手法』を採り入れた。これが驚くべき効果をもたらした。かつて、「日本の整然として美しい皇居周辺のビル街では、タバコや空き缶のポイ捨ては気後れがしてやりにくい」と言ったニューヨーカーがいたが、清潔さが街を汚す行為を阻み、治安の良い街が犯罪の発生を防ぐという立派な「原因」あるいは「誘因」になっている。直接手法も必要だが、けた違いの予算が要る改革の大ナタを振るうことばかり考えず、間接的だが身近な問題から解決していけば改革の糸口がつかめるかもしれない。――といった実に興味を引く内容でした。

 2月8日の私のホームページで発信した「暴走族対策」(2月議会で審議、議決され、4月1日に条例施行)もこうした考え方が当てはまると思います。暴走行為や公園などでの迷惑行為へのペナルティを重くし、暴走族を追放するとともに、市全体で違法行為や犯罪を起こしにくくする雰囲気を醸し出すことが、安全で安心な街づくりの基礎になるという考え方です。タバコやゴミのポイ捨てに目を光らせるクリーンキャンペーンも同じことが言えると思います。

 もう一つ、安全で安心な街づくりのために申し上げたいことがあります。それは、犯罪や非行などを防止することと合わせて、既に過ちを犯してしまった人の更生を支援することにも目を向けてほしいということです。
 皆さんはご存知ないと思いますが、罪を犯したために家族や地域からも受入を拒否された人々を支援し、社会復帰を促す更生保護施設が吉島にあります。非営利民間組織が運営する「ウィズ広島」という施設ですが、政府や公的機関だけではできないサービスを提供するなど再起のための手助けを行っています。
 しかしながら、この建物は築後30年経っており、老朽化のほか男性のみの利用に限られている点など更生施設として十分適したものとはなっていません。現在、平成15年度末の開設を目指し、男女共に更生の支援が受けられるよう施設改善の準備をしていますが、建築費約4億6千万円は、自己資金の他、法務省、広島県、広島市をはじめ県内各市町村に援助を求めていくということです。また、広島市においては、これに合わせて周辺の住環境整備を行っていかなければならないと思います。
 犯罪から社会を守り、安全で安心して暮らせる街づくりには、取締りの強化やその処罰も必要ですが、犯罪や非行に陥った人の立ち直りを助け、その社会復帰を促す取り組みも大切です。こういう人たちも、周囲の条件と本人の自覚によっては立派に立ち直ることができるというお互いの信頼感を醸成する必要があるのではないでしょうか。そして、社会秩序と市民にやすらぎを与えるための環境づくりを行政が連携して取り組むべきだと思います。

将来ビジョン構築の取り組み
 次に、将来ビジョン構築の取り組みといった視点から、いくつか述べたいと思います。
 まず、苦言を呈しておきたいのですが、今の市の取り組み方をみると、施策の構築やその実行方法について、企画・調整能力が組織として働いていないのではないか、と思っております。
 以前にも述べましたが、広島市の投資的経費はピーク時の半分以下です。財政は逼迫し、民間ならリストラも当然といった厳しい状況です。広島が、今最優先でやるべきことは何か…敢えて申し上げるまでもないかも知れませんが、まず、今後の財政スタミナで市ができる範囲はどこまでなのかきちんと整理し、その中で何が最も効果的なのか、そして、それをどういった手順で進めていくべきなのか、といった当然とも言えることをしっかり議論し、調整していくことです。その中には、もちろん厳しい中にも将来に夢のある施策も企画しなければなりません。削るべきところは削って、必要なものでも進度調整するなどして、実効性のあるものを打ち出さなければなりません。金がなくて何も出来ないと言うばかりでは、企画も財政も要りません。
 そういった調整をした上で、例えば貨物ヤード跡地利用構想について言えば、当然この時期には将来の財政問題も含めたプロジェクトの評価がなされて、具体的な事業化シミュレーションが示されなければならないわけです。これまで、結論の先送りが繰り返されてきたのは、企画、財政が組織として働いていなかったことが大きな要因だと思います。民間企業は、行政のように実施着手まで5年、10年と長くかけることはしません。是非、6月末には決断し、明確な実行手順を示されることを強く望みます。

 貨物ヤードに限らず、行政の推進においては、社会情勢や財政状況を踏まえたスクラップアンドビルドの考え方を組織に浸透させることが必要です。財政再建路線の中で、いかに知恵を出して有効な施策を打っていくかという意識を各人が持った組織にしなければなりません。
 例えば、都市再生法で「水の都整備構想」の再構築を、という方向が示されていますが、単に護岸を整備して河川を美化するだけでは投資に見合う大きなインパクトは得られません。水の都としての広島のイメージアップを図るため、拠点となる魅力空間の整備が必要なのではないでしょうか。
 ここで一つ提案があります。吉島には、かつて企画サイドで刑務所の移転の検討を進めていました。法務省や移転候補先との調整を行った経緯もあります。問題点も多々あることは承知していますが、移転後の青写真がなかったことも前に進まなかった大きな理由だと思います。刑務所周辺には狭隘で不便を来している道路が残されています。移転後を想定し、ここを区画整理して、都市再生にふさわしい夢のある質の高い拠点形成を図り、水の都整備構想の中心に位置づけるようなシナリオを構築していくことを、企画サイドも検討すべきではないでしょうか。
 ただ単に、金をかけて箱物をつくれと言っているのではありません。都市再生の意義は、経済や投資対象としての都市を扱うだけでなく、生活の場や地域社会のあり方にも密接に関係した施策の展開が必要と言われています。質の高い拠点形成には、これまでの拡大期の「都市整備」ではなく、これからの収束期に向けた「都市整成」の都市づくりといった観点から、質に着目した形で検討を進めていくことが必要だと思います。

 以上、犯罪や非行に社会全体で目を向けることの大切さとその環境整備の必要性、それから、まちづくりについての企画・調整についての組織的な取り組みの必要性について提案も含めて述べたつもりですが、皆さんはどう思われますか。