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(No.08) 平成14年4月2日 『助役人事に係る総括』

 はじめに、これだけは断言しておきます。
 私自身、広島が好きです。広島を愛しています。
 広島に生まれ、育ち、今日まで成長させてくれた「ヒロシマ」に感謝しながら、現状を述べさせていただきます。

 「市長の告発」「議会の主張」「調査委で検証へ」…およそ、女性助役選任に関係あるとは思えない新聞記事のタイトルを目にされたと思います。
 ここでは、女性助役の公募に端を発した助役人事に係る本質的なところについて、皆さんに誤解のないよう、市長と議会との関係や、それぞれの役割・仕事の内容等を紹介しながら、本年の第1回市議会定例会における議論の経過について述べさせていただきます。

< 目次をつけました。 ご利用ください。 >
      =  目  次  =

  ◇ 経緯

  ◇ 議論の必要性

  ◇ 長と議会の関係

  ◇ 3人助役の過去の論戦経過

  ◇ 方向転換の不思議

  ◇ 議会の結論

  ◇ 女性キャリアと公募制

  ◇ 総括

  ◇ 追申として



経 緯

 まず、これまでの経緯を整理して紹介します。
 市長は、今年1月4日の事務始め式において、突然、女性助役を公募し2月定例会に提案したい旨を表明しました。そして、1月15日から1ヶ月の公募に踏み切ったわけです。
 2月19日からの市議会定例会では、まず本会議の総括質問において、3人目の助役の必要性や、なぜこの時期なのか、といった女性助役の是非以前の問題について、市長の姿勢を問う質問が繰り返されました。
 続いて、新年度予算などを審査する予算特別委員会では、総務関係の諸議案が審査される3月14日の朝に突然解任された森元助役のことについて、多くの議員が質問しました。
 さらに、3月25日には小田助役の辞任(3月31日付)と、現、都市計画局長高村義晴氏の助役選任を発表し、女性助役候補も全国から公募した猪爪範子氏を選任する旨を表明されました。
 そして、3月27日の本会議に「助役選任同意案」として正式に議案が提出され、質疑、討論の後、投票による採決を行い、賛成少数により、否決されたわけです。

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議論の必要性

 このように、助役人事をめぐって一連の論戦が繰り返されたわけですが、マスコミ報道をご覧になってお分かりと思いますが、市民の立場に立って質問した議員が、理解し納得できるような誠意ある説明、答弁は最後まで発せられることはありませんでした。
 私は、当初、市長が助役3人制を前提としていた時には、「広島市は今、何が課題で、解決していくためには『こういう仕事をしていく必要があるから、このような組織、人事にしていきたい』という説明があって、それを受けて、様々な角度から総合的に議論していくべき問題である」ということを述べてきました。2月1日の私のホームページで発信した内容です。
 これに対し、市議会本会議の総括質問での市長の答弁は、3人制を前提とし、男女共同参画の理念と事務量の増大などを繰り返し、本質的な議論をしようとする姿勢は見られませんでした。
 その後、市長の発言は、女性助役登用の議論はダブルスタンダード、つまり、女性だからハードルが高いという主張に変わりました。
 これについては、後述しますが、平成4年2月議会で3人目の助役を選任することについて、議論が活発に行われた経緯から、今回の議会での議論は、決して女性だからではないということは、十分理解されると思います。
 なぜ、私たちが投げかけている問題提起をまじめに受け止めようとしないのか、市長の姿勢に大きな疑問を感じたのは私だけではありません。

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長と議会の関係

 議論していくことがいかに大切かということをわかっていただくため、長と議会の関係について少しくわしく紹介します。この問題を十分理解していただくには、まず、「長」つまり市長と、「議会」つまり市民代表の集合体の、それぞれの役割、仕事を知っていただく必要があるからです。
 地方公共団体の長と議会の関係は、首長制(大統領制)と呼ばれ、長と議員は直接住民によって選ばれ、共に住民の信任が基盤となっています。そして、それぞれの職務権限を持って、相互に他を牽制しながら均衡を維持できるよう並列対等の立場にあります。これが「車の両輪」と言われる理由です。
 この長と議会の「相互牽制」の方法とは、長には「議会の招集権」「議案の提案権」などが、そして、議会には「議決権」や長に対する「監視的機能」などが与えられています。
 わかりやすく言いますと、長は、行政を動かしていくための重要な案件があれば、議会を招集し、それを提案する権限があり、議会は、その案件について、市民の立場に立ち、考え方を質問したり、市民にとってよりよいものにするためには、批判や意見を出し合い、最終的には議決により結論を出します。
 もちろん、長は、案件を提出するにあたっては、いろんな角度からの検討や意見聴取などを行わなければなりませんし、議会も行政の重要な方向づけを行うことから、決して自己本位であってはならないことは大原則です。
 こうした案件は、本来であれば、市民全員がいつも参加して決められればいいのですが、それは無理であり、市民を代表する議員の集合体である議会において議論し、最終的には多数決の原理で市の意思決定を行っていくわけです。
 
 例をあげて説明します。事例は、ソフト・ハードいずれも考えられますが、ここでは分かりやすい例で説明します。
 例えば、ある街に橋を建設しようとする場合ですが、まず、市民の中からここに橋を架けてほしいとの声が上がって、その声が大きくなってきます。市長はこのことについて、どのくらいの市民が利益を受けるのか、周辺住民だけでなく広く市民にとってどのような効果があるのか、この橋よりも先に建設すべき橋はないか、財源はあるのか、建設するとしたらどの箇所にすべきか、など様々な検討をした上で、議会に橋を建設することを提案します。
 その提案を受けて、議会においても、広島市にとってなぜ必要なのか、他に優先度の高い事業はないか、建設費は適正か、といったように様々な角度から議論が展開されます。決して、橋そのものの構造やデザイン、金額だけを取り上げて議論するわけではありません。
 こうした議論は、本会議での提案・質疑、委員会での詳細審査、さらに本会議での討論・議決といった流れで最終的な結論が出されるわけです。
 このようにして、長と議会がそれぞれの役割と責任を持って、市政が間違った方向にいかないようにしているわけです。つまり、市長の提案を受けた議会が議決をしようとすれば、それを判断していくため議論する情報、資料が必要であり、それに基づき市長に対して質問を行い、市長も議会に対し十分に説明する義務があるのです。

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3人助役の過去の論戦経過

 市長は過去に助役の人事案件では詳細な議論はしていないと主張していますが、確かに個人の資質を問うような議論は本人のプライバシーもあり、行っておりません。しかし、過去にも、人事案件では本質的な議論をしたことはあります。
 平成4年の2月議会ですが、アジア競技大会を前に、助役2人を3人にする人事案件(助役定数条例の改正案及び助役選任同意案)が提出された時です。
 この時もマスコミの先行報道に端を発し、議会軽視にはじまり、お互いが理解し合う姿勢が必要だとの声が上がりました。
 その結果、新たに総務委員会に付託して審議することになり、活発な議論が展開されたわけです。本会議、委員会で延べ13人の議員が論戦を繰り広げましたが、特に、必要性の議論の際は、アジア競技大会による事務量の増大だけでなく、空港問題、広島駅周辺整備、臨海部開発、大規模跡地利用、広域行政、高齢社会への対応など都市基盤全般や社会情勢変化を踏まえた「必要性」の考え方が示されました。
 こうした議論の過程で、一定期間だけ突出するアジア競技大会の事務量を勘案した場合、助役を3人に固定する必要はないことから、「3人」を「3人以内」とする修正案が提出され、可決されたわけです。
 平成4年の時も、そして、その後の平成8年にも、今回と同様、今なぜ、助役を増やす必要があるのかといったことが議論されたわけであり、決して被選任者の資質を問うような議論は交わしていません。今回の論戦が決してダブルスタンダードでないことは明らかです。

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方向転換の不思議

 こうした論戦についても展開されるはずだった予算特別委員会(総務関係)を前に、市長は、森元助役を突然解任し、また議会最終日を前に小田助役の辞任を発表したわけです。
 理由は、人心一新ということであり、結果的には女性助役選任のための環境づくりになったとの発言もありました。もう一つ、政官癒着の実態があったことも日を異にして表明されました。
 結果として、女性助役の必要性も議論されるはずであった予算特別委員会が根底から覆されて、解任劇の真相追及の場になってしまったのです。
 議員の中には、重要な新年度予算の審査をする予算特別委員会ではなく、別途、集中審議があっていいくらいの重要な問題だと質問された方もいました。
 恐らく多くの市民が感じていると思いますが、市長はなぜ、助役3人のままで新助役の必要性を議論しようとしなかったのか、そして必要性の理解を得るための説明をしなかったのか、ということであります。誠心誠意その姿勢を示し、納得のいく説明があれば、違った展開になったのではないかという声さえ聞きます。
 審議の仕方には、予算特別委員会や議会運営委員会との関連もあり、軽々には言えませんが、いずれにしても、議論する場に材料が投げかけられなかったことは明白です。

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議会の結論

 そして、3月27日の市議会本会議において、投票による表決の結果、いずれの助役の選任同意案も否決されました。
 ただ、ここで申し上げたいのは、女性助役問題だけに皆さんの目が注がれていますが、この2月議会での本来の仕事は平成14年度予算を成立させることです。
 本会議最終日を迎え、私が一番危惧したのは、平成14年度一般会計予算案の一部である折り鶴の永久保存に関する費用を削除するという予算特別委員会での修正可決が、本会議で同様に採決されるか否かという点でした。
 予算特別委員会では起立採決で賛否が伯仲して修正可決されたわけですが、危惧したとおり、特別委員会(議長を除く59人で構成)とほぼ構成員を一にする本会議で、一夜にして一転し修正案が否決となる事態が生じたわけです。
 委員会の修正結果が、そのまま本会議で成立することに疑いがないと判断される場合は、通常、委員会での表決の結果は委員会報告として本会議に提出され、そのまま報告のとおり決するか否かを採決することになります。
しかし、今回は、通常の方法で採決を行えば、委員会の報告が否決された場合、平成14年度一般会計予算案の全てが否決されることとなりますので、本会議開会の直前まで採決方法を検討していたわけです。
最終的には、最悪の事態を避けるため、予算特別委員会で修正可決した部分を、そのまま本会議においても切り離して部分採決する方法を選択しました。
 こうした一般会計予算案の採決方法の手続きに加えて、助役選任同意案に係る無記名投票の要求に対する対応や、続いて提出された記名投票に対する要求対応に時間を要したわけです。

 助役選任同意案の表決の結果については既に述べたとおりですが、表決方法について、無記名投票・記名投票のいずれの方法も会議に諮って否決された後、なぜ、議長職権で無記名投票にしたのかという声が上がっているようです。また、無記名投票は民主主義の原則に反するとの発言もあったようですが、ここできちんと表決方法についての私の考えを述べたいと思います。
 表決方法には、大別して、簡易表決(異議の有無を諮る)、起立(又は挙手)による表決、投票(記名又は無記名)による表決があります。
 このうち起立による表決が最も原則的な表決の方法であり、投票による表決に比べて簡便で、かつ賛否が比較的明確に認定できる長所があります。一方この方法は相互監視、つまり周囲を見ながら起立するかどうかを決めるという自分の意思以外のものが作用してしまう短所があります。また、賛成が多数か少数かを宣告するのみで、具体的な数が明らかになるものではありません。
 先に述べましたが、折り鶴の永久保存に関する費用削除という修正可決がたった1日で逆転してしまったように票が変わるといったこわさを併せ持っており、賛否が伯仲している時は慎重な取り扱いを要する方法です。
 なお、今回の場合は、より厳正な投票による表決の要求(無記名と記名の2件)が、出席議員から会議規則で定められた要件を満たして提出されましたので、その時点で起立表決による方法はとられないということになります。
 投票による表決には記名と無記名の2つの方法がありますが、いずれの方法も、賛成、反対のそれぞれの投票数が宣告され、その数も会議録に記録されることになります。
 このうち記名投票は、明確な自己の所信が表明できるという長所がありますが、反面、賛否の区別が一目瞭然であるだけに、場合によっては自己の意思に反した表決を行うことがあるという短所があります。つまり、起立表決の相互監視と同様の作用が働いてしまう可能性があるわけです。
 このように、問題によっては、記名投票では意思の表明が難しいことがあり、その場合は無記名投票という方法があります。
 無記名投票は、自己の所信の表明は明確になりませんが、政治的に又は所属会派や地域の利害から離れて自由に自己の意思をそのままストレートに伝えられる方法です。また、議会の選挙は、公職選挙法の規定を準用して無記名投票ですが、この制度も、この人に託したいというその人の心をそのままの形で意思表示できるものです。
 今回の助役選任同意案の場合、無記名投票も記名投票も過半数とはなりませんでしたが、無記名投票を支持する議員が多くおられたこともあり、私は、自らの意思を素直に伝えられる無記名投票が最善と判断したわけです。
 なお、この無記名投票を規定した会議規則は、広島市議会特有のものではなく、全国市議会議長会による標準会議規則に、前述のような考え方で規定されているものであります。問題によっては、それぞれの議員がその選択を判断できるものであり、決して無記名投票が民主主義の原則に反するという言葉は、当てはまらないものです。

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女性キャリアと公募制

 こうした議会の結論があった後、昨年夏からの女性助役登用に向けた動きが新聞に掲載されました。3月29日の中国新聞の特集「亀裂広島市政」の一部です。
 記事を補足して紹介しますと、市長が総務省の女性キャリアの助役登用の方針を固めて、自民党の大物衆議院議員を通じ、私に話があったという内容です。3人制を前提としたもので、実際昨年の8月23日にお話を承りました。
 新聞では財政問題を理由に私が断ったとありましたが、財政問題だけではありません。国の役人を助役にあてるということになると、議会も責任をもって、そのポストを含めた組織体制を認知し、共に市政を進めていくという土壌が整わなければなりません。
 したがって、その土壌が整ってからという意味も含めて、市長再選後に2人体制で実現してはどうかとお話したのも事実です。また、仮に国の役人を議会で認めないという結果になった場合、国との関係悪化に繋がる恐れがあるし、市としても大きな責任問題になるわけです。
 こういう経過があり、前述したように、市長は、突然、公募制を表明し走り始めたわけです。公募であれば、国との関係はなく、否決になっても国土交通省に対しても責任問題にはならないという判断でしょう。
 もう1人の助役候補の高村氏の場合も、その時点では広島市の職員であり、否決になっても責任問題は発生しないわけです。
 極論すれば、市長は、今回の助役の選任同意案は2人とも否決になってもやむを得ないという思いがあったのではと思います。もし可決されれば公約を果たし自らの評価は高まるし、否決されれば議会が悪いといったように、どちらになろうと議会が決めること、というある面では市長としての責任が見えない同意案だったわけです。
 市長が、自らの責任で全力を傾注して議会、市民に理解を求めようとする姿が見えなかったのも、そういう思いがあったからこそと思います。

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総 括

 これまでに述べたことから、改めて今回の助役人事について総括したいと思います。
 冒頭で申し上げましたように、通常、長が議会に重要な案件を提出しようとする場合には、内容の理解を得るために、議会に対して説明を行っています。特に、人事案件については、市長からしか提案できないものであり、議会側は説明があるまで一切の判断材料は持っていないわけです。
 そして、この度の人事案件について、議会の理解を得るための市長の努力は見られず、それどころか議論を回避するような行動に出るなど、まじめに事務手続きを進める気持ちがあったかどうか、はなはだ疑わしいものでした。
 市長のこれまでの取り組み姿勢を見て思うことがあります。西部開発事業の推進に当たって、漁業関係者との調整が大きな課題となっていた時、当時の山田市長は自ら地元を歩いてひざを突き合わせて話し合い、理解を求めたという話です。
 市長は、タウンミーティングを平岡前市長から継承し、オフィスアワーを新しく加えて市民の意見を聴かれているようですが、日時、場所をセットし「待つ」姿勢ではなく、積極的に問題があるところに「出て行く」姿勢を持ってほしいのです。
 今回の案件について言えば、議会という市民代表の集合体とひざを突き合わせて、議論しようとする姿勢が必要だったのではないかと思います。

 最後に、市長と議会が対立しているという構図があるとすれば、市民にとって、市政にとって決して正常な姿であるとは思いません。
 市長には、市民、議会の理解を得ようとするまじめな気持ちで、6月議会に向かってほしいと思います。
 今回の議会は、人を信じる大切さと、人を疑うというつらさを同時に教えられた議会でした。
 助役人事に係る一連の経過と私の思いを述べましたが、皆さんはどう思われましたでしょうか。

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追伸として

 3月30日の朝日新聞に掲載された有識者の意見を皆様に参考にしてほしいと思います。
 広島大学法学部(行政学)の川崎教授の「無記名投票という採決方法は、議員の考え方がストレートに表れるというプラスの面もあった。」という意見ですが、これは、人それぞれ考え、思い、感性等全て違うということで、このことが民主主義の原点ではないのでしょうか。
 それから、市長は議会との「癒着を切る」と言明されながら、3月26日の夜の数多くの市議会議員への電話は、何であったのでしょうか。
 これも、改めて皆さんといっしょに考えてみたいと思います。

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