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(No.01) 平成14年1月1日

『広島が目指すべき街づくりの方向』

 ここでは、私の街づくりに関する考え方を、『月刊経済春秋』への寄稿文を引用させていただき、ご紹介させていただきます。
       = 目 次 =

◇ 広島が目指す都市づくりの視点

◇ 札仙広福よりも名古屋・デトロイト型

◇ 都市づくりと産業

◇ 街づくりと賑わい

◇ 街づくりの展開

◇ 終わりに




広島が目指す都市づくりの視点

 “広島の活性化”…ここ数年来さかんに登場し、私たちが大きな課題として受け止めている言葉である。広島はこれまで「国際平和文化都市」を都市像に掲げ、多種多様な施策を展開してきた。しかし、バブル経済の崩壊後、目まぐるしい社会経済構造の変革期に直面している中、既存概念に頼っていては新しい都市づくりの発想は生まれてこない。
 広島の活性化には、従来の枠組みにとらわれることのない新たな手法を取り込みながら、既存システムのスクラップ&ビルドや、広島のポテンシャルを活用した産業との融合など、新しい概念の下で都市づくりを行う必要がある。
 加えて、広島の目指す都市規模も視野に入れなければならない。現在の広島市の人口は113万人で、周辺地域を取り込んだ都市圏人口は約180万人である。少子化の時代、この圏域人口の増加は望めないだろう。しかしながら、圏域人口の捉え方を、経済のグロ−バル化と同様な視点にスイッチし、海外をも取り込んだ圏域とすれば、都市圏域は拡大し、実質的な圏域人口(パイ)も拡大することとなる。
 ここでは、以上のような視点で、広島が目指す都市づくりの方向性を探ってみたい。

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札仙広福よりも名古屋・デトロイト型

 広島は、製造業の町である。特に、自動車産業の集積度は高く、高い技術力、ノウハウを持っており、海外からもその評価は高い。デルタに発展した都市で、平地が少なく、都心に商業、業務、文化等の諸機能が過度に集積している。都市間の圏域でみると、東には関西経済圏とのつながりの大きい岡山県、西には九州経済圏に吸収されている山口県に挟まれており、通過型の都市とも言われている。
 広島は、同規模の地方中枢都市である札仙広福でよく比較されるが、他の3都市はいずれも商業都市である。広島は、むしろ、国内では名古屋を、海外ではデトロイトを参考にすべきではないか。地形的にも、産業構造的にも類似しており、「通過駅にいかに人を止めるか」という共通課題を抱えている。そして「物づくりの基盤の上にソフトを載せている」という経済構造も持っている。
 また、名古屋は、集客力の向上を図るため、大型外資系ホテルの誘致、ド−ム球場の建設、都心機能の拡充などを積極的に推進している。デトロイトは、人口流出を阻止するため、BIG3を中心とした自動車メ−カ−や関連産業の誘致及び大規模なニュ−タウン開発など魅力づくりに取り組んでいる。
 共に、ハ−ド・ソフト両面おける既存システムのスクラップ&ビルドの視点に立って、歴史と伝統を残しながら、新しい開発事業の導入を行っている。そして、自動車産業のグロ−バル化に適合するよう、部品メ−カ−の補完性の強化を図るなどしている。
 これらの事業展開は、広島の都市づくりに大いに参考となるものと思われる。

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都市づくりと産業

 右肩上がりの成長期であれば、都市基盤(ハ−ド)の整備をどんどん行い、経済循環により拡大成長を遂げられるが、今はそうした時代ではない。どういった分野の産業をターゲットに、どのような活性化を目指し、それにはどのような開発や整備が必要か、といった視点での街づくりを考えていかなければならない。
 広島の強みは、自動車産業で培った高品質の製品を大量に生産し、集約し組み立てる技能、ノウハウがあることである。地場の自動車部品メーカーは、部品調達のグローバル化を捉え、国内外のメーカーとの受注獲得に生き残りを賭けた競争をしている。従来の言われたままの加工に応じるのではなく、マーケット調査から価格や品質の提案ができるような部品の商品化にも取り組んでいる。
 このような企業の取り組みをさらに生かしていくためには、国内外への取引をさらに拡大できるような情報発信機能を強化していかなければならない。また、他の分野の新しいものにも目が向けられるよう、例えば、現役で活躍している技術者と大学など研究機関がお互いに連携を高めて、新しい時代の産業への転換をさぐるなど研究開発機能の充実が必要である。
 もちろん、自動車関連産業だけでなく、製作所などの機械産業、商工センターの卸などについても同様のことが言え、社会変化を捉えた各分野のIT化は街づくりの大きな柱に成り得ると思う。
 そして、こうした土壌をつくりあげるには、広島大学や市立大学を活用し、産・官・学の連携による人材育成に取り組んだらどうかと思う。スタンフォード大学でやっているように、具体的に民間からの研究開発を受けられるような体制にするとよい。大学も、単なる学術研究でなく、ビジネスに結びつけられるような、これまでの枠組みを超えた整備も可能と思う。分野間の連携により、広島を本当に活性化したい人材を育成し、地場のベンチャービジネス起業へと結べば、人づくりだけでなく、パイの拡大にもつながってくると思う。

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街づくりと賑わい

 一方、財界からは「街に賑わいがなければ企業は元気を取り戻せない」と、早急な活性化の取り組みも求められている。
 貨物ヤード跡地の問題もその一つである。ただ、これまでの議論の過程で、貨物ヤード跡地は「ドーム球場ありき」ではないという認識はしてもらえたと思う。今後、跡地の活用を政策判断していく上で大切なのは、貨物ヤード跡地という「点」で考えるのではなく、JR広島駅周辺、八丁堀、紙屋町、市民球場と続く「線」として捉え考えていくべき、ということである。
 仮に、貨物ヤード跡地に球場をつくるとすれば、現在の市民球場はどうするのかという問題が起こってくる。また、県庁が移転すれば、同様に跡地はどうするのかという問題も出てくる。昨年は中国地方初の地下街“シャレオ”が開業して広島も元気なところを見せたが、当然こういったところを見据えておかないと“シャレオ”の苦戦だけでは終わらなくなる。ラインに集積する商業・業務機能を、何をターゲットとして、どのように有機的に結びつけていくのか、ということが重要なのである。
 「点」の議論だけに終始してしまうのではなく、人々を導き交流し合う街づくりのビジョンを描かないと、場当たり的な一過性のプロジェクトに終わってしまう。人々が集い、交流すれば活気が生まれ、夢が出てくる。

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街づくりの展開

 都市部だけでみても、都心の低・未利用地の活用や既存市街地の活性化、あるいは臨海部の埋立地の利用といった多くの課題がある。そして都心周辺の拠点地区や都市圏との連携・交流も促進しなければならない。これらを短・中・長期で、それぞれがつながりのあるビジョンを構築することが必要だと思う。
 このためには、先に述べたように、都市づくりにおける新しい概念のもとに、まず産業と街づくりとの連携・融合を図ることが大切である。これから伸びる産業は何で、それを支援していくためにはどういった整備が必要なのか、といった地域の産業を街づくりの資源として捉えた展開を考えていく必要があるのではないか。そうすることにより、産業が都市を育み、都市が産業を成長させるという関係が成り立ち、そこには、交流と賑わいが生まれることになる。
 そして、周辺の拠点地区や都市圏との連携を強化し、相互に人を導く交通網や情報網などハード・ソフト両面にわたる都市インフラを、人に優しく環境に配慮した形で整備しなければならない。

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終わりに

 都市づくりは一朝一夕にできるものではない。都市には過去からの歴史の蓄積がある。これらを効率的かつ有機的に活用し、未来に向けた勇気ある新たな挑戦が必要である。そして、将来を見据えたビジョンと研ぎ澄まされた洞察力を持ち、都市づくりと都市運営を図っていかなければならない。
 アストラムラインの延伸問題では、市議会特別委員会で「交通」と「街づくり」の両面から議論してきた。財政状況を踏まえ、3つのユニットという実行手順も示されて政策判断された。このことが、正に「ビジョン」と「展開」を兼ね備えた新しい都市づくりを象徴しているのだと思う。
 都市づくりは10年先を予測し、果敢なく挑戦していく勇気と決断力をもって行わなくてはならない。これまで述べてきた“活性化”の取り組みは、21世紀の街づくりの基本になるものと思うし、日本いや世界に誇れる都市“広島づくり”を市議会でもしっかり議論していきたい。

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